92.漱石から採る物理の問題

子供が、入試勉強で、国語や英語の長文問題では問題を解く時間が無くなるとぼやいていた。そういう時は、問われている問題を先に読んでから、問題文である長文に目を通したら、どこに答えが潜んでいるかわかりやすい、と助言しておく。長文読んでから問題を…

91.CP対称性の破れ

前回、鏡のこちらと向こう側では自然法則は同じでなくなり、こちらの世界で起きる事象が、あちらの世界では禁止されることがあることを、コバルト 60 の放射性崩壊を例にして、見た。最後に指摘しておいたように、さらに、粒子・反粒子を入れ替えると、鏡の…

90.鏡の向こうとこちらの物理

前回、89 回では、鏡の向こう側が何故、右と左が反対に見えるのか、あるいはそう感じるのかについて考察した。人とかだと、あからさまに左右が違う。例えば顔のほくろの位置とか、心臓の位置とか。でも、基本の基本の自然法則までたどれば、自然は鏡のこちら…

89.鏡の向こう側

とあるテレビの番組を見ていたら、「鏡に映すと右と左が反対になるのは何故か?」という質問があり、その回答が「よくわかっていない」となっていた。 えっ、まだわかってないの??となってしまった。 まぁ、設問に対する回答としてはそうなのかもしれない…

88.平方数の和

第30回で四元数に触れた。少し復習しておこう。 まずは、普通の数。a と b という二つの数があったとしよう。数字 a の“大きさ”を絶対値と言って、|a| と書くと、 |a| |b| = | ab| になるのは、ほぼ当たり前だ。 次に複素数。2 乗したら-1に なる“虚数単位”…

87.潮の満ち引き

第86回では、月が地球から離れているという観測事実から理解できることを見た。 では、なぜ月は地球から離れて行っているのであろうか。 第86回と同様な状況設定しておこう。 月と地球は万有引力を及ぼしあいながら、共通の重心の周りを回転運動している。月…

86.地球と月

第85回では単位の定義の改訂について触れた。その中で、時間の単位、秒の定義を書いておいた。 歴史的には、秒の定義はセシウム 133 原子を用いた定義になるまでは、1900 年の平均太陽日の 24 分の 1 の 60 分の 1 の 60 分の 1 を 1 秒として定められていた…

85.単位系の改訂

第49回で長さの単位の決め方の変遷に触れた。その際、質量の単位の基準がキログラム原器から変更されることに触れた。 2018 年 11 月 16 日に国際度量衡総会で新しい単位の基準が承認され、2019 年 5 月20 日から施行の運びとなった。 時間と長さの単位の基…

84.太陽が眩しいから

さだまさし(敬称略)というシンガーソングライターがいる。俳優の菅田将暉さんがさださんの学生時代を演じたドラマを以前に見たことがある。だいぶん雰囲気良い方に寄せてるから演じられたご本人は気分いいだろうなぁ。 それで、久しぶりにさださんの昔の曲…

83.対数表

授業のレポートで、数値を求めさせる問題を出した。すると、「ルートの計算ができない」と書かれていて、有効数字とか関係のない答案があった。たとえば、特殊相対性理論でローレンツ因子 √(1- v2 / c2 )なんてのがあって、c は光の速さ、v は物体の速さだ…

82.天の川銀河の星の数

地球は太陽の周りを回っている。地球はほぼ円軌道で太陽の周りを回るので、地球と太陽までの距離 RE、およそ 1 億 5 千万キロメートルを半径とした円周を、1 年、365 日かけて 1 周する。ということは、1秒あたりの速さ vE として、(速さ)×(時間)=(動い…

81.頭から腐った魚、腐った魚の頭

2018 年 7月、台風7号が通り過ぎたというのに、雨は降り続く。特に、7 月 5 日からひどくなり、気象庁が特別に緊急会見を開き注意喚起するも、20 時頃には西日本を中心に 20 万人に避難勧告が出される。翌 6 日夕刻には九州3県に、続いて中国地方 3 県に大雨…

80.シュテファン・ボルツマンの法則に従って、暑い

第62回の備忘では、人が座っているだけで熱を発生しており、「代謝率」なるものを引っ張て来て、おおよそ一人当たり100 W、1秒間に100 Jのエネルギーを熱として放出していることを見た。 今回は、代謝率という生理学的な知識を使わず、物理学だけで再度検討…

79.魚は頭から腐る

大学でもインターンシップなるものが導入され、年月が経ってきた。結局のところ職場体験のことではあるが、もともとは産学連携のためにアメリカ合衆国で行われてきた制度だ。 何でもかんでもアメリカに倣え、最近の風潮。 日本では、バブル景気でイケイケど…

78.球の表面積、再び

第60回で、球の体積が何故 4πr3 / 3 になるかという話をした。そこから球の表面積 4πr2 を求めたが、球の体積を経由せずに直接、球の表面積を求めるにはどうすればよいかという質問を受けた。 そこで、球をとても小さな高さ Δx ずつに輪切りにしていくことを…

77.見~っけた

大阪の下町育ちなので、子供の頃の遊びは、「だるまさんがころんだ」というような上品な10文字を数えて遊ぶのではなく、遊びの内容は全く同じではあるが、「坊さん(ぼんさん)が屁(へ)をこいた」であった。続けて10文字10音節、「匂うたら(におうたら)…

76.アイドルになりたい

新学期が始まった。大学も新入生であふれかえる春爛漫だ。 今もそう変わりはないが、私が大学に入りたての頃は、一人暮らしを始めたばかりの経験の浅い、経験値の低い新入生を狙って、とにもかくにも様々な勧誘がやってきたものだ。新興宗教、ねずみ講、おと…

75.さくら

2018年の桜、正確にはソメイヨシノではあるが、開花一番乗りは我らが High Intelligence 県であった。気象庁の係の人が、お城にある標準木を午前にチェックに行ったがまだ基準に達していなくて、午後にまた行ったがまだ駄目で、もう一度、午後 4 時半ころに…

74.ひらめきと直感

薬学・脳科学研究者の池谷裕二さんの著書を読んでいたら、「ひらめき」と「直感」が区別されていた。『「ひらめき」は思いついた後に、その答えの理由を言語化でき』るということで、一方、『「直感」は、本人にも理由がわからない確信を指』すとある。なる…

73. 日本の暦学・天文学

High intelligence city での「市民の大学」の第82期、「宙(そら)を見あげて」の15回の講座が終了した。講座を企画して講師を依頼した運営委員として、感慨無量である。最終回の15回目には、私を除いて講師を務めて頂いた方12名のうちの2名を招いた。最初2…

72.戦争の記憶

High intelligence city での「市民の大学」の運営委員会。無事に進行し、終了後は年に一度の懇親会。80歳前後の大先輩のお二人の近くに座って話をする。私が50歳過ぎということで、 「なんだ、まだ子供かぁ。」 「まだ、しょんべん垂れやないか。」 と言わ…

71.二十四節気と太陰太陽暦

「今日は立冬、暦の上では冬」なんていうニュースが毎年秋に流れる。今年もそうだった。日本には、立春、立夏、立秋、立冬の「四立(しりゅう)」がある。もちろん、もともとは中国のものだ。夏至、冬至と春分、秋分の「二至二分」は西洋でも意識しているが…

70.曜日の名前

日本では曜日は、日、月、火、水、木、金、土、と、太陽、月、火星、水星、木星、金星、土星の5惑星だと連想する。日、月は除いて、そもそも、5惑星の名前は、中国の五行説から採られているので、五行とも言えるが、基本、惑星である。 どうしてかというと、…

69.宇宙観の進展

High Intelligence City で行われる「市民の大学」。その運営委員として、宇宙関係の講座を企画した。全15回で、その初回は開講挨拶を兼ねて自分が講師として話をすることにした。題して、「はじめに、宇宙観の展開」。我ながら、大きなタイトルをつけてしま…

68.7か国語

カナダにある、物理学の或る学術論文誌から査読の依頼が来た。 査読というのは、研究者が論文を投稿した時に、論文誌の編集者がその投稿論文が学術的に意味があるか、間違っていないかなどを、適切な他の研究者に依頼して審査させるというもので、原則匿名、…

67.適応

人類の進化も面白い。専門家ではないので、色々間違って理解しているところは多々あると思うが、備忘のため記す。 今から300-400万年前、東アフリカにはアウストラロピテクス属に分けられる2種類の猿人がいたそうだ。一つはアウストラロピテクス・アファレ…

66.伝わる

夏は暑い。 第10回で、気体を考えると、絶対温度は気体分子の運動エネルギーの平均に比例して導入されることを見た。 < mv2 / 2 > = (3/2) kB T ここで、mは分子の質量、vはその速度、<・・・> は平均を取るという操作、kB = 1.38×10-23 J/K はボルツマン定…

65.電磁誘導の法則

「理学部」から「理工学部」に看板を掛け変えたために、新装オープンせざるを得なくなった「物理学概論」という授業。従来、1年間、2学期で行っていた内容を半年で行いなさいと言う厳命が下され、なんとか講義ノートを作った。でも、内容をかなり削減。 短時…

64.ぼくの伯父さん

中学時代の友人、T君が俳優の道に進んでいた頃(44回)、彼の影響もあって、戯曲に興味を持つようになった。といっても、テレビのシナリオである。向田邦子、倉本聰、山田太一といった人たちのシナリオが書籍として売られていたので、電車に乗って大きな本屋…

63.物理と笑い

朝永さん(朝永振一郎、1965年ノーベル物理学賞)の随筆「鳥獣戯画」に、複製で良いので実物大、巻物になったのがほしいと思っていたところ、長年の望みかなったという話がある。そのなかで、「鳥獣戯画」の場面の描写がある。長くなるが引用しよう。 『絵巻…