2.地球の重さ

 学生さんのレポートをチェックする。今回は、地球の質量を推定する問題を与える。毎年、春の時期の出題だ。有効数字の確認と、出てきた答えがそれらしいかの感覚を掴んでもらうための簡単な課題。

 

 ニュートンの運動法則は、

 

   (力)=(質量)×(加速度)

 

と知られている。質量は英語で「mass」なので、m [kg] (キログラム)とする。加速度は英語で「acceleration」なので、a [m/s2](メートル毎秒毎秒)とする。いつも「acceralation」と書いて、授業中、その場でスマホで検索する学生さんに苦笑される。「フランス人はHが発音できないので、日本語の『はい・いいえ』の『はい』を教えても、必ず『アイ』という、日本人なんだからlとrの区別がつかなくて当然だ、グローバル人材と言うのは英語ができると言う意味ではない」、などと強調しておく。力は「force」なので、F。何故か大文字。

   

    F = m a

 

 ところで、すべて質量(おも(重)さ)を持つ物体は、互いに引き合う。よろず(万)、あ(有)るものは互いに、ひ(引)き合う、ちから(力)が働く、ので、これを万有引力、または重力と呼ぶ。2つの物体の質量をそれぞれm [kg] とM [kg] として、これらは距離 r [m] だけ離れていると、万有引力 F の大きさは

 

    F = G m M / r2

 

と書ける。ここで、 G は万有引力定数と呼ばれる比例定数で、6.67×10-11 m3/kg s2 である。なぜ距離の2乗に反比例するのか、それはまたの機会に話すことにして先を急ぐ。

 

 地上では質量 m [kg] の物体は、すべて同じ加速度 g [m/s2] で

 

    F = m g

 

という力を受ける。加速度 g には名前が付いていて、重力加速度なんぞと呼ばれている。でもって、地上で物体が受ける力は、地球と物体との万有引力だから、

 

    F = G mM/ R2

 

とも書ける。ここで、M [kg] は地球の質量、R [m] は地球の半径。ただし、地球は完全な球体としている。こうしておくと、ちょっと高度な積分計算で、地球が、地球外に在るほかの物体に及ぼす引力は、地球の全質量が地球の中心に集中しているとして計算して良いことが示せるが、大学1回生の多い授業なので、ここは飛ばす。

 

 そうすると、地上で物体が重力加速度 g で「落下」するのは地球の引力が原因であり、地上で、質量 m [kg] の物体には

 

     F = m g = G m M / R2

 

という式が成り立つことになる。こうして、地球の質量 M [kg] は

 

     M = g R2 / G

 

と表されることがわかる。重力加速度 g は、地上で物を落としてみて、速さの変化、つまり加速度を測定すれば求められる。だいたい、g = 9.80 m/s2 。地球の半径は、紀元前のギリシャのエラトステネスが計算して以来、大体分かっており、おおよそR=6380 km = 6.38×106 m。

 

 あとは数値を入れて電卓を叩けば良いので、地球の質量の概算はできる、という寸法。しかし、106 (=1000000)とか、10-11 (=0.00000000001)とか出てくると、計算間違いする学生さんが続出する。レポート課題を出すときにいつも注意する。「出てきた答えがモットモらしいか、考えなよ」。

 

 答えは、おおよそ6.0×1024 kg。60垓トン。1垓(がい)は1000京(けい)の10倍、1京は1000兆の10倍、1兆は1000億の10倍(以下続く)。

 

毎年、計算違いして提出する学生さんが少なからず居る。地球の質量(重さ)、歴代レポート最軽量値は

  

     M = 60000 kg

 

おう、60トンね。6は合ってる。素晴らしい。桁の勘定間違ったのね。答えが出てから、一呼吸、欲しいよね。

 

60トンといえば0系新幹線の先頭車両の重さ。四国新幹線(?)の重さはおおよそ27トン、地球半分弱か。家への帰りの道すがら、前を走るトラックの最大積載量の表示を見ると3000 kg、3トンであった。

 f:id:uchu_kenbutsu:20150502133149j:plain 0系新幹線JR西日本ホームページから)

          (http://poppo.westjr.co.jp)  

f:id:uchu_kenbutsu:20150502133217j:plain 四国新幹線JR四国ホームページから)

          (http://www.jr-shikoku.co.jp/yodo3bros/tetsudohobby/index.htm)