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10.仕事 (work) とエネルギー (energy) と状態方程式 (equation of state)

 「こたつと日焼けとプランク分布」で出てきた、プランク分布なるものを考えてみたい。プランク分布とは、振動数 ν [1/s]を持つ電磁波(光)が、絶対温度 T [K] でどれだけの強さで放射されているかを司る。

 ちょっと長くなりそうなので、数回に分けて考えていこう。

 

 初回は、「仕事」と「エネルギー」と「理想気体の状態方程式」から。

 

 

仕事とエネルギー

 まずは、「エネルギーの保存法則」についてみてみよう。

 物体に力 F [N] を加えて、力の方向にある距離 r [m] だけ物体を移動させたとしよう。このとき、私たちは物体に「仕事をした」と言う。不思議な言い方だが、物量用語。英語では、仕事のことをまさに「work」いう。「仕事」は頭文字をとって W [J]。力 F [N]  がした仕事 W [J] は、

 

    W  =  F × r

 

だ。

 

 ところで、地表付近で、質量 m [kg] の物体を、高さ s [m] まで持ち上げたとしよう。最初に物体があった高さを、便宜的に0としておく。物体には、下向きに F=mg [N] の力が働く。地球が質量 m の物体を引っ張っているから力が働いている。(力)=(質量)×(加速度)で、g=9.8 m/s2 は「重力加速度」だ。地球が引っ張る力に逆らって、高さ s [m]までゆっくり物体を持ち上げると、私たちがこの物体にした仕事 W [J] は、(仕事)=(力)×(移動距離)で、

 

    W=m g × s

 

となる。せっかく「仕事」をしたのに、その成果はどこへいったのだろうか。実は、私たちがした「仕事」は、物体の「位置のエネルギー」として物体に蓄えられている。今の場合、「位置のエネルギー」は、私たちがした仕事、W=mgs に他ならない。

 

 次に、この物体から手を離そう。物体は、高さ s [m] から地表に向かって落下する。もともと物体があった高さ 0 メートル地点にきたら、せっかくした「仕事」がなくなってしまいそうだ。しかし、落ち着いて考え直してみよう。ガリレイの落下の法則から、初めの速さが0で、高さ s [m] から時間 t [s] で距離 s [m] 進んだとすると、

    s=g×t2 / 2

 

という関係があった。また、時間 t [s] での速さ v [m/s] は

 

    v=g×t

 

だ。ということは、W=mgsの「位置のエネルギー」は、時間  t [s]  たって、物体がもともとあった高さ 0 の位置に来たときには、

 

    W=mgs=mg×(gt2 / 2)=m×(g×t)×(g×t)/2=m×v×v /2

 

となっていることがわかる。要するに、距離 s [m] だけ落下すると、速さ v [m/s] になって動いているわけだ。そこで、

  

    W=m×v2 / 2 (にぶんのいちえむぶいのにじょう)

 

を「運動エネルギー」と呼ぶことにしよう。「位置のエネルギー」がすべて「運動エネルギー」に変わったわけだ。「エネルギー」の量はいつも一定に保たれているので、この事実を「エネルギー保存則」と呼ぶ。

 

 

理想気体の状態方程式

 ところで、気体を考えて、気体は分子からできているとしよう。何で突然気体かって? まぁ、色々都合があるので、とりあえず考えてみよう。体積 V [m3] の箱に分子を閉じ込める。分子が箱の壁にぶつかると、運動の向きを変える。向きまで含めて「速度が変化する」のだから「加速度」が生じる。加速度に分子の質量を掛けたら「力」だから、分子は壁にぶつかって「力を及ぼす」。単位面積当たりの力のことを「圧力」という。たくさんの分子が壁にぶつかっており、その平均を考えればよい。では、箱の体積を半分にすると圧力はどうなるだろうか。体積が半分だから、分子が箱の壁に当たる頻度は2倍になるだろう。ということは、及ぼす力も平均的に2倍に増える。つまり、「圧力は2倍になる」。圧力を P [Pa] と書くと、今言ったことは

 

    P は V に反比例する ・・・・(**)

 

ということ。

 今度は箱の中の分子数 N を2倍にしてみよう。分子の個数が2倍に増えたのだから、箱の壁に当たる頻度も2倍だ。そうすると、やっぱり圧力は2倍になる。つまり

 

    P は N に比例する ・・・・・(***)

 

ということ。

 

 次は温度だ。温度ってなんだ? 高い温度だと水が沸騰して水蒸気になって羽根車まわして仕事ができる。タービン回して電気にしてから仕事にしても良い。実は、「温度」とは分子の運動エネルギーの平均を見ているものだ。分子の運動エネルギーは mv2 / 2 だったので、平均を <・> で表して、

 

    < mv2 /2 > = 3 kB T / 2 ・・・・(#)

 

の関係がある。ここで、右辺の T は絶対温度で、摂氏温度 t 度とは T = t +273.15 [K]の関係がある。つまり、すべての分子が静止していて、v=0 ならば、T=0 ということを意味している。これが「絶対零度」。これより低い温度はない。運動エネルギーと絶対温度 T をつなぐのが kB =1.38×10-23 J/K  で、ボルツマン定数と呼ばれる。右辺の2分の3は、、、まぁ、お茶目に入れておいたということにしておこう。

 さて、箱の壁に及ぼされる圧力 P は、分子の運動の変化から生じる単位面積当たりの力だった。正面からぶつかって、速度の大きさ、つまり速さは変えず、向きだけが反転したとしよう。速度v が -v になったということ。速さの変化は v-(-v) = 2v になる。これが加速度だから、力は質量を掛けて、F=2mv。でも、単位の時間(1秒としよう)に分子が箱の壁に当たるためには、その分子は箱の壁から v [m] 以上離れていてはだめだ。1秒後に壁に届かないから、壁にあたらず力を及ぼせない。単位体積当たりの分子の個数を n [個/m3] とすると、単位面積 [1 m2] あたり、v [m] の高さの筒の中には分子は n×v×1  個あり、これが箱の壁に当たって力、もとい、単位面積 [1 m2]を考えていたので「圧力」Pを及ぼすので、

  

    P は 2mv [N / 個] × nv [個 / m2 ]  = 2nmv2 [N / m2 ]  = 2nmv2 [Pa] に比例する

 

ということになる。だって、1個の分子あたり 2mv [N] の力を及ぼすが、箱の面積1m2 あたり nv 個の分子が壁に当たるから、それが圧力 P。でも、多数の分子が当たるので、平均をとって、

   

   P は <2mv×nv>=4n×<mv2 / 2 > に比例する

 

 

ちなみに、単位あたりの粒子数 n [個/m3] は、n = N / V だ。まぁ、今はいいや。こうして、<mv2 / 2 >は運動エネルギー、すなわち絶対温度に比例しているので

 

    PはTに比例する ・・・・(****)

 

単位あたりの粒子数 n [個/m3]  にも比例していたので、Nに比例してVに反比例していることがもう一度出てきた。まぁ、いいや。(**)式、(***)式、(****)式から、全部まとめて考えると、

 

   圧力(P)は、粒子数(N)に比例し、絶対温度(T)に比例し、体積(V)に反比例する

 

ことがわかった。比例定数は、実はボルツマン定数 kB になり、

 

    P V = N kB T ・・・・(0)

 

が得られる。これは、「理想気体の状態方程式」として知られている。

 

 なんで「『理想』気体」なのかというと、まず、分子の大きさはどこにも考慮されていないので、分子の大きさを無視していること。それと、本当は分子間にも力が働くはずだが、衝突する以外は全く力を及ぼしあわないとしていること。とっても理想化しているよね、というわけで、「理想気体の状態方程式」。

 

でも、(0)式から、色々判る。まず、「絶対温度」に最小の値、0 [K] があることは、温度の定義、つまり分子の運動エネルギーの平均値と言うことから判ったことをもう一度確認しておこう。シャープ式(#)だ。全ての分子の速さ v が 0 ならば平均も 0 だから、右辺の絶対温度 T も 0 という寸法。

 

 (0)式「で「一定温度の下では、圧力は体積に反比例する」というのは、高等学校では「ボイルの法則」なんて名前で習う。

 

 (0)式で、絶対温度 T は摂氏温度 t と T = t + 273.15 の関係があった。273.15を273に丸めてしまって、ちょっと書き直すと

     P V = N kB T = N kB (t + 273 ) = N kB 273 (t / 273 + 1 ) ・・・・(0’)

 になる。何が言いたいかというと、圧力 P が一定の下では、摂氏温度が 1 度上がると、体積は 1/273 つまり、273分の1だけ増えることが見て取れる。「圧力一定の下では、温度が上昇すると体積が増加する」なんてのは、高等学校で「シャルルの法則」なんて名前で習う。

 

 (0)式で、「同一圧力、同一体積、同一温度のもとでは、全ての分子数は等しい」なんぞという、恐ろしいことが言えている。だって、同じ大きさの箱を用意して、同じ温度、圧力の下においておいたら、中の分子の個数は最後の1個まで、勘定するとぴったり N 個で合うと言っているのだから、玉入れの個数を赤白で数えている場合ではない。10の23乗個くらいあるんだからたまらない。高等学校では「アボガドロの法則」なんて名前で習う。

 

 状態方程式、すごい。