13.並に進路で、屈折、する

 光は波として振る舞う。水の波を思い浮かべればよいが、どんぶらこ、どんぶらこと、波の山と谷が交互にやってくる。山から次の山までの長さを「波長」という。ギリシャ文字の λ (ラムダ)で表す。長さは英語で length だが、アルファベットの「 l 」に対応するギリシャ文字が「 λ 」だ。波が進んでくる。その速さを v で書く。ある点でじっと待っていると、1秒間に波の山が f  個来た時、波の振動数を f [1/s ] とする。単位は Hz (ヘルツ)。 普通は振動数をギリシャ文字の ν(ニュー)で書くのだが、書体的に見にくいので f と書くことにする。振動数を英語で「frequency」というので頭文字の f で表したと思って頂こう。1秒間に山が f  個来て、山と山の長さが λ[m] であれば、1秒間に波は f × λ [m] 進んでいるから、速さは f × λ [m/s]。つまり

 

    v = f ×λ ・・・(1)

 

 空気中と水中での光の伝わり方を考えてみよう。光は水中では空気中より速さが遅くなる。空気中での光の速さを c空気、水中での光の速さを c水中 としよう。そうすると、

c空気 >c水中 ということ。1秒間にくる山谷の個数は同じ、つまり波の振動数 f は変わらないので、(1)式をみると、速さ v が変わると、波長 λ がかわるということがわかる。今、光の速さは c と書いていることに注意しよう。水中では空気中より速さが遅いのだから、波長は短くなっているというわけだ。λ空気 >λ水中 ということ。図に書けば以下の通り。

 

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 海岸線に打ち寄せるような、波面が平面の波を思い浮かべよう。破線が波の「山」と思えば宜しい。破線に垂直な矢印の線が、波の進む方向。そうすると、水中では光の波長が短くなっているので、必然的に光の波の進む方向が折れ曲がる。これが光の屈折。

 

 お風呂に入っているときによく気が付く。図のように座って湯船につかっているとしよう。実線が水中での足の折れ曲がり。ちょっと膝を抱えている。下手な図だが心眼でそのように見るべし。足先で反射した光は、少し太い点線のような経路をたどって、目に届く。水面で屈折している。さっきの図で、下から光をたどったものになっている。

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 でも、人は、いちいち光が屈折しているなんてことを考えずに物を見るので、水中から光は「まっすぐ」来ていると思ってしまう。目は、まっすぐ先、図では細い実線で書いたように、まっすぐ先に足先があると思ってしまう。だから、足は、細い点線で書いたように、ちょっと折れ曲がって、浮いたように見える

          

 水中から空気中に進む光を考えると、水中から水面に差し掛かるときの角度、図のθ が大きくなってくると、ある角度以上では水中から空気中に光が出られなくなる。全反射という。水の代わりにガラスで細い管を作ってそこに光を通すと、ガラスの外の空気中に出られなくて、光は全反射を繰り返しながら進んでいく。これが光ファイバー。原理は至って簡単。

 

 人は空気中を進んでくる光を見ている。その光を目のレンズで屈折させて焦点を合わせて鮮明に見ている。人自体がおおむね水でできているから、目のレンズの成分もおおむね水と考えれば良い。そうすると空気中を進んできた光が水でできたレンズで屈折させられて、網膜に焦点を合わせると考えればよい。空気中と水中で、光の速さは異なるから。

 ということで、ゴーグルつけずにプールに入って、目を開けてみよう。中は見えるけれど、焦点が合っていない。それもそうだ。水の中を進む光を、水でできたレンズで屈折させようとしても、光の速さに変化がないのだから屈折しようがない。屈折させられないので焦点を合わせられない。私達の目は空気中仕様で焦点を合わせるようにできているので、水中ではボケるというわけだ。ゴーグルをつけて、目の前に空気を入れておくと、空気を伝わった光を、いつもどおり屈折させることができるので、良く見える。