18.掛け算。証明に触れた、夏。
割り算の次は、掛け算の話題。小学生の楽しい読書で、こんなことが書いてあった。小学校の木造校舎の2階の図書室はワンダーランドだった。手にした本ごとに知識が詰まっていた。わくわくした
1の位が5で、10の位が同じ数同士の掛け算。15×15、25×25、35×35、45×45、55×55、65×65、75×75、85×85、95×95のこと。簡単にできると書いてある。10の位の数に1足した数と、元の数を掛ける。○△となったとする。そうすると、答えは、○△25という数になる。たとえば、
25×25
だと、10の位の数に1を足して、元の数を掛ける。10 の位の数、2に1を足すと、2足す1は3だから、3。これに、もとの10の位の数、2を掛ける。3×2は6。この「6」に25をくっつけて
625
これが、25×25の答え。
もうちょっと確かめてみよう。75×75 はどうだろうか。7に1足して8だから、元の7を掛けて、はちしち56。だから、
5625
が答え。85×85でも同じだ。8足す1は9だから、ハック72。答えは
7225。
全部確かめても9個なのでやってみたら良い。やってみた。すべて正しい。
中学になると「証明」というものが存在することを知った。10の位の数を a とすると、考えている数はa × 10 + 5 と書ける(10a+5)。だから、考えている掛け算は
( a × 10 + 5 ) × ( a × 10 + 5 )
だ。掛け算と足し算は ( x + y )× (u + v ) = x×u + x×v + y×u + y×v という、いわゆる分配則なるものが成り立つので、xと u をa×10、y と v を 5 だと思えば、
( a × 10 + 5 ) × ( a × 10 + 5 )
= (a×10)×(a×10) + (a×10)×5 + 5×(a×10) + 5×5
2行目の真ん中2つは同じだから、5+5=10で、(a×10)×5 + 5×(a×10) = (a×10)×10。
だから、
( a × 10 + 5 ) × ( a × 10 + 5 )
= (a×10)×(a×10) + (a×10)×5 + 5×(a×10) + 5×5
=(a×10)×(a×10) + (a×10)×10 + 25
=a×a×100 + a×100 + 25
=a×(a+1)×100 +25
となる。できた。10の位の数aに1足した(a+1)と元の数 a を掛けて100の位において、あと25を足している。これで、a が1から9までどれでも良いことが言えた。
「証明」という概念に触れた13歳、夏であった。