21.手で掛け算

 掛け算の話題が続いてしまったので、最後にもう一つ。1掛ける一から5掛ける五まで、五より小さいもの同士の掛け算を知っていた場合のこと。6掛ける4とかはちょっと除く。6以上の数同士の一桁の数の掛け算。両手を使ってやってみよう。

 六以上の数同士だ。5以下の数同士の掛け算の答えは知っているという前提。

 たとえば、7掛ける6。

 右手に7を与えよう。右手を開いて(じゃんけんのパーをして)、親指から1,人差し指が2,中指が3・・・と折って(閉じて)いく。5まで来たら小指も寝てしまって、グーの形。6、7といくと、小指、薬指を立てて復活させる。7、だと小指と薬指が立っていて、親指、人差し指、中指は折れて寝ている。

 今度は6。左手を開いて(じゃんけんのパーをして)、親指から、1,2,3・・・と閉じていく。5まで来たら小指も寝てしまって、グーの形。6といくと小指が立った。

 さて、右手の立っている2本の指と、左手の立っている1本の指を足す。2+1=3。これを10の位と思って、30。次は寝ている指に注目。右手の寝ている指は親指、人差し指、中指の3本。左手は、親指、人指し指、中指、薬指の4本。一応、5より小さいもの同士の掛け算は知っていることにしたので、寝ている指の数同士を掛け算する。3×4=12。さっきの立っている指の本数かける10をした30にたすと、30+12=42。おぅ、6×7=42だよね。

 

 偶然だったらいけない。8×7。右手に8を与えよう。右手を開いて(じゃんけんのパーをして)、親指から1,人差し指が2,中指が3・・・と折って(閉じて)いく。5まで来たら小指も寝てしまって、グーの形。6、7、8といくと、小指、薬指、中指を立てて復活させる。8、だと小指と薬指と中指が立っていて、親指、人差し指は折れて寝ている。

 今度は7。左手を開いて(じゃんけんのパーをして)、親指から、1,2,3・・・と閉じていく。5まで来たら小指も寝てしまって、グーの形。6、7といくと小指、薬指が立った。

 さて、右手の立っている3本の指と、左手の立っている2本の指を足す。3+2=5。これを10の位と思って、50。次は寝ている指に注目。右手の寝ている指は親指、人差し指2本。左手は、親指、人指し指、中指の3本。一応、5より小さいもの同士の掛け算は知っていることにしたので、寝ている指の数同士を掛け算する。2×3=6。さっきの立っている指の本数かける10をした50にたすと、50+6=56。おぅ、8×7=56だよね。

 

 中学生には、証明だ。

 5より大きくて10より小さい数を、(5+a) としよう。左手だ。もう一つの数を(5+b)としよう。右手だ。さっきやったのを確かめると、aとbが立っている指の数になるはずだ。さっきの計算では、立っている指の数の足し算をして10の位に置いた。今だと(a+b)を10の位に置くのだから、(a+b)×10 ということ。あと、寝ている指の数同士を掛け算した。立っている指が左右それぞれaとbなので、寝ているのは5本の指から引いて、それぞれ(5-a)、(5-b)だ。掛け合わせると

 (5-a)×(5-b)=25-5×(a+b)+a×b

さっきの立っている指の数×10に足すと

  (a+b)×10+(5-a)×(5-b)

  =(a+b)×10 +25-5×(a+b)+a×b

  = 10×a + 10× b +25 – 5× a – 5×b +a×b

  = 5 ×a + 5× b + 25 + a×b

 一方、もともとの掛け算は

  (5+a)×(5+b)

  =5×5+5×a +5×b+a×b

 25の位置がずれてしまったけれど、おんなじだ。ということは、6×6以上の一桁の掛け算は、両手を使ってできるということだ。

 

 証明を除いて、昭和40年代から50年代に差し掛かる小学生のときに読んだ本に書いてあったことだ。今ではこんなことが書いてある小学生向けの本に出会わないのはどうしたことだろう。