24.山の高さ

  高校の時には沢山勉強することがあった。短期記憶はピークだったようで、色々覚えたが、すぐに忘れた。沢山のことを覚えなくて良かったのは物理と数学。

 地学で岩石の名前がいっぱい出たが、もう覚えていない。必要ならば調べる。

 

 小学6年生の子供が、山はどれくらい高いのか、という不思議なことを聞いてくる。どの山のことだ? まぁ、いいや。考えよう。

 

 良く知らないが、山は花崗岩でできているとする。大地はとてつもなく硬いとしておこう。そうした時に、山の高さはどれくらいになれるだろうか。

 

 花崗岩を調べてみる。花崗岩にも色々種類があって良くわからない。まぁ、大雑把に見積もるだけだから、そんなに神経質にならないでおく。

 

 「地質ニュース」なんて、普段の研究からは程遠い研究雑誌を見てみる。花崗岩の圧縮強さは、だいたい200 MPa(メガパスカル)くらいらしい。1Paというのは、1平方メートル当たり1N(ニュートン)の力が加わった時の圧力の単位。メガ(M)は106 のこと。だから、200 MPa=2×108 Pa だ。天気予報を聞いていると良く出てくるのは、1気圧が1013 hPa(ヘクトパスカル)。ヘクト(h)は102 のこと。だから、1013 hPa=1.013×105 Paだ。

 

 花崗岩に2×108 Paの圧力をかけると、圧縮強さの限界なので、破壊されるということだろう。じゃぁ、自分自身の重みで、山の底面がこの圧力まで来たら、山は自分を支えられなくなって崩れるということだろう。まぁ、そう考えておこう。

 

 花崗岩の密度(ρ)は、ρ=2.6×103 kg / m3 と、地質ニュースのある論文に書いてある。花崗岩が高さ h [m] まで積みあがったら、底面にかかる力は

    (力)=(質量)×(重力加速度)

       ={ (密度)×(体積) }×(重力加速度)

となる。底面積を S [ m2 ]としておくと、高さが h [ m ]だから、体積は S×h で、質量は(密度)×(体積)なのだから、ρShということだ。

 

 圧力は、単位面積当たりにかかる力だから面積で割って

    (圧力)=(力)/ (底面積)

        ={ (密度)×(体積) }×(重力加速度)/(底面積)

        =ρS h × g /S

となる。重力加速度は、g=9.8 m / s2。こうして、高さ h [m] の花崗岩が、自分の底面に及ぼす圧力 P [Pa] は

    P(=(圧力)) = ρgh

と書けた。これが、2×108 Paに達すると山は崩れるのだから、花崗岩の密度 ρ と重力加速度 g の値を入れると、山の限界の高さ h がわかる。やってみると

   P = ρgh=2×108 [Pa]

   → h = 2×108 /(ρg)

            =2×108 /(2.6×103 ×9.8)

           = 7849

   ≒ 7850 [m]

となる。だいたい、8000メートル。

 

 世界最高峰のエヴェレストは8850メートルくらいらしい。実際に存在する山より少し低めに出たが、よくわからん仮定の割には、まぁまぁだ。

 

 ちなみに、火星は地球より小さいので、火星表面での重力は地球より弱い。およそ3分の1らしい。火星で最も高い山はオリンポス山で、標高2万4000メートルらしい。エヴェレストのほぼ3倍。計算通りだ。