41.歩行とダイエット

 不思議な式を見つけた。運動時のおよその消費カロリーは、(メッツ)×体重[kg] ×運動時間 [時間] ×1.05 で見積もれるらしい。どっから導かれるんだ、この式? 1.05 掛けるのは何故だ? とか、全く理解はしていない。メッツとは、その運動が安静時の消費エネルギーの何倍かを示すものらしい。厚生労働省のホームページにも値が書いてある。信じて計算してみると、体重 60 kg の人が速足で1時間歩いたときに必要なエネルギーは 158 kcal と出る。基礎代謝も含んでいるようだ。いや、わからん。はっきり書いておらん。基礎代謝とは運動せず安静にしていても生きていくの必要なエネルギー、消費カロリーのこと。基礎代謝プラス速足歩行の消費カロリーが 158 kcal なのか?

 

 3 月は 10 日間、大学の色々な用事を皆さんに任せて、海外逃亡していた。いわゆる、高飛びというやつだ。行った先がヨーロッパなので往復に時間がかかり、先方での滞在は実質 6 日間であったが。飛行機の機内での時間や乗り継ぎの待ち時間があるので、何冊か本を持って行って読む。その一方、空港内の移動などでとにかく良く歩く。空港のターミナル間移動も半端では無い。先方に着いても、滞在時のホテルから先方の大学、あるいはスーパーマーケットへと、とにかく歩く歩く。持って行った何冊かの本の中に、人が歩くときに要するエネルギーは、さほど多くない、という記述があった。チンパンジーが手(前足?)をグーにして四足歩行しているときに必要なエネルギーの3 分の 1 程度だそうだ。チンパンジーの歩行でどんな風にエネルギーが使われるのか知らないが、人が歩く時に必要なエネルギーを、不思議な式に頼らずに、簡単に当たってみる。ボールペンは胸ポケットにさしていたが紙が無いので、読んでいた本に付けていたブックカバーで行った計算。

 

 その本によると、人が普通に歩行しているときには、重心が持ち上がり、また元に戻るとあった。重心を高く移動させて位置エネルギーを稼ぐ。その位置エネルギーはすべて前進するための運動エネルギーとして使われると仮定する。授業のレポート課題に丁度良い。エネルギー保存則だ。

  

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 図の左端のように、まずは両足を開いた状態。次に図の左から  2 番目のように両足が一瞬揃い、その後、図の左から 3 番目のように、浮かせた足を着地させる。とりあえず人の重心はへそのあたりにあるだろうから、重心の移動距離だけ考えるのであれば図の黒丸の移動の高さを見積もればよい。足の長さを l (エル)[m]、歩幅を s [m] としておく。右端の図のように、左端の図の前足、両足が揃った時の足、左から3番目の図の後ろ足と、足の動きだけ抜き出して書くと、黒丸の高さの移動が三平方の定理を利用して計算できる。

 

    h = l - √( l2 - ( s / 2 )2 ) ( = l - ( l2 - (s / 2)2 )1/2 )  ・・・(1)

 

 重心の高さの移動がわかったので、足を踏み出してから重心が最高点に達するときに体がした仕事が、重心移動の位置エネルギーとして蓄えられる。位置エネルギー U は

    

    U = m g h  ・・・(2)

 

だ。m [kg] は人の質量(体重)、g = 9.8 m/s2 は重力加速度、h [m] は(1)で求めた重心の高さの移動だ。人が一歩、歩くとき、これだけのエネルギーが必要としよう。位置エネルギーに変換されたこのエネルギーが、すべて前進するための運動エネルギーになるとする。運動エネルギーは「二分の一エムブイの2乗」、mv2 /2 だ。ここで、v [m/s] は移動の速度。(2)の位置エネルギーがすべて運動エネルギーに変換されると、「エネルギー保存則」から

  

    m g h = m v2 /2

 

だから、得る速度 v は

 

    v = √(2 g h) [m/s]  ・・・(3)

 

となる。h [m] には(1)を代入すればよい。

 

 1 時間歩いたとしよう。1時間歩いて進む距離 L [m] は、速さ×時間だから、1時間は3600秒であることと、(3)式は秒速であることに注意して

 

    L = v × 3600 [m]   ・・・(4)

 

となる。1 時間歩いた時の歩数 N は、歩いた距離が L [m]、歩幅が s [m] だったので

 

    N = L ÷ s    ・・・(5)

 

で求められる。1 歩ごとに体は(2)式のエネルギー mgh を必要としていた。だって、一歩ごとに位置エネルギー U = m g h を体が提供しないといけないのだから。ということは、1 時間歩いて必要な(消費される)エネルギー E [J] は、

 

    E = m g h × N [J]  ・・・(6)

 

となる。

 

 ちょっと、数値を仮定して、1 時間歩いて消費されるエネルギーを当たっておこう。足の長さは、l = 0.70 m としよう。70 cm もないかもしれないが、盛っておく。歩幅もエイやっと、s = 0.70 m としておく。体重は軽めに、60 kg。

 

    l = 0.70 [m]

    s = 0.70 [m]

    m = 60 [kg]

 

このとき、重心の高さの移動 h は(1)式から

 

    h = 0.0937 [m]

 

と計算できる。およそ 9 cm。h がわかったので、移動の速さ v は(3)式から得られる。  

 

    v = 1.35 [m/s]

 

およそ、秒速 1.4 m。時速に直すと、4.87 km / h。およそ時速 4.9 km だ。少し早足。では、1 時間で歩く距離 L は(4)式で分かる。時速 4.87 km なので、言うまでもなく

 

    L = 4.87 × 103 [m]

 

では、何歩歩いたか。それは(5)式でわかる。

 

    N = 6.96 × 103

 

およそ 7000 歩だ。さぁ、消費したエネルギー E は、(6)式でわかる。

 

    E = 3.83 × 105 [J] ・・・(7)

 

今の仮定の下での計算ではあるが、これだけの運動で、これだけのエネルギーを使うと言える。ジュール [J] という単位になじみが無ければ、カロリー [cal] に直しておこう。

 

    1 cal = 4.19 J

 

なので、(7)の値を 4.19 でわればカロリーで表示できる。やってみると

 

    E = 9.14 × 104 [cal]

     = 91.4 [kcal]

 

およそ 91 キロカロリーと出た。

 

 実際の測定値もきっとあるのだろうが、調べきれていない。

 

 ちなみに、鳥肉のから揚げ 1 個 (30g) で 70 kcal 程度、ビール一缶 (350 ml ) で140 kcal 程度、クロワッサン 1 個 (40g) で 180 kcal 程度らしい。また、チーズケーキ一人分、まあホールの 6 分の 1 か 8 分の 1 位だろうが、それでおよそ 300 kcal 程度だそうだ。

 

 チーズケーキは以前から好きだが、それにも増して、うちのおくさんの作るチーズケーキは最高においしい。絶品である。余りケーキが好きでない息子ともども、親子でいつもパクパク食べる。

 

 それとこれとは別なのだ。