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45.コリオリ力・フーコーの振り子・台風

 ポルトガルコインブラ大学に滞在し、共同研究を行う。日本にいると相当量の研究・教育以外の大学運営・人事管理などの仕事に追われ、落ち着いて物を考える時間が無い。海外の研究室に滞在させてもらって、適度に議論しながら研究を進めるのが最近の研究方法と化してきている。コインブラ大学は、日本の富士山と同時期に、世界遺産に指定されている。世界遺産で講義を聞く学生さんは如何なる心境なのだろうか。

 

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 滞在するのは物理教室。といっても、巨大な建物1棟丸々である。玄関を入るとフーコーの振り子が取り付けられている。振り子はゆっくり揺れているが、時間がたつと、振り子が振動する面が回転していく。その原因は地球の自転にあるので、地球の自転を目に見せる実験ともいえる。実際に、フランスのフーコー(1819-1868)が、パリのパンテオンで実験をするときにおそらく招待状に記したであろう言葉が、コインブラ大学のフーコーの振り子にも書いてある。

 

          「Je vous invite à voir toruner la Terre」

       (地球の回転を見るよう、私はあなたを招待します。)

 

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 フーコーが初めて実験したパリのパンテオンは、フランス遊学中に自宅のアパルトマンからパリ大学に通う途中にあった。もちろんそこでも、フーコーの振り子は揺れている。

 

 地球は自転しているので、地上にいる私たちは慣性系に居るのではなく、回転座標系に居る。回転座標系から振り子の振動を見ているので、振動面が回転していく。すなわち、振り子の振動面が回転していくのを見るということは、地球が自転(回転)しているのを見ているというわけだ。

 

 なぜ、地球が回転していると、振り子の振動面が回転していくか。これは、回転座標系という非慣性系で運動を見ていることにより生じる見かけの力の影響である。この見かけの力をコリオリ力という。コリオリは人の名前。

 

 大学の物理で習う程度の問題なので、ここではごく直感的に見ておこう。

 

 まずもって、簡単化して、地球を北極の真上から眺めてみよう。地球は反時計回り(左回り)に自転している。このとき、北極点から振り子が図1のAの方に揺れたとすると、地球は自転しているので、Aにいた人は回転してBの位置にいるだろう。ちょっと図は極端に描いているが。回転座標系、すなわち地球にいる人は、自分に向かってきた振り子の重りは、上から見て右にそれていくように見える。振り子が戻っていくときにも振り子の進行方向に対して右にそれるように見える。これを繰り返すと、振り子の振動面は回転していくように見えるというわけだ。振り子の振動面は回転せず自分が回転しているのだが。

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 今は北極で考えたが、適当な緯度のところでも原理は同じだ。ただ、極では振り子の振動面は1日1回転するが、適当な緯度では回転の角は小さくなり、赤道では零になる。緯度がどれだけなら、どれだけ回転するか計算できるが、三角関数出てくるのでここではやらない。北半球の極以外では、北に向かう物体は右に逸れていくように見える。これが見かけの力、コリオリ力の影響だと考える。この計算もここではパス。回転座標系で運動方程式を立てたら、見かけのコリオリ力が出てきて、それを取り込んで運動方程式を解けば宜しい。でもここでは直感的に理解できたらよしとしよう。

 

 コリオリ力は夏の終わりから秋ごろ、特によく目にする。台風の風である。

 台風は発達した低気圧であるので、気圧の高い方から低い方へ空気が移動するため、台風の目の方に向かって風が流れる。このとき、北半球では、見かけの力、コリオリ力のため、風の進行方向に対して右側に逸れるように流れていく。もし、台風が周りの空気を引き込む強さと、コリオリ力の大きさが等しければ、空気の流れ、すなわち風は台風にひこまれずに、左回りに回るだけだ。台風の目に引き込まれようとしても、まっすぐ目の方には進まず、右に逸れる。釣り合っていると引き込まれず、目の周りをくるくるまわる。ところが、空気を引き込む方が実際には強いので、風は台風の目の周りを左回りに回りつつ、目の方に吸い込まれる。こうして、図2の右のような風の流れになる。これが、経験することだ。

 

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