78.球の表面積、再び
第60回で、球の体積が何故 4πr3 / 3 になるかという話をした。そこから球の表面積 4πr2 を求めたが、球の体積を経由せずに直接、球の表面積を求めるにはどうすればよいかという質問を受けた。
そこで、球をとても小さな高さ Δx ずつに輪切りにしていくことを考えてみる。下の左図は、球を横から見て、右上の4分の1の断面を書いたところ。球の中心はO、半径は r としておく。ある高さのところ、図では A の位置であるが、ここで、ズバッと球を切るとする。このとき、A から球の表面 B までの長さが x だったとする。三角形OAB を取り出して書いたのが、下図の右下だ。長さ r と x を書いておいた。さて、表面の点 Bで、この球に接する面を考え、大円方向の接線を引いたものが、左図にあるように半径方向に垂直に点 B を通って引かれた直線だ。A 点から高さ Δx だけ離れた点 C から、やはり球をズバッと切って表面に達した点を D としている。D からまっすぐ下に垂線を降ろして AB と交わるところが E だ。図を見てもらった方が早い。
ここでできた三角形 BED は直角三角形で、三角形 OAB と同じ形だ。正確には BD は球の表面にあるので円弧だから直線ではないが、Δx がとても小さいので、直線だと思って(近似して)三角形だと考えても差し支えない。三角形 BED と三角形 OAB が同じ形だということは次のようにして分かる。角 AOB は直角三角形の直角でない角の一つだから、角 AOB =(90度-角ABO )だ。一方、BD は点 B での接線と見なせるから、角 OBD は直角、ということで、角 EBD = ( 90度-角ABO )だ。さっきの角 AOB と右辺が同じじゃん。ということで、角 AOB = 角 EBD となる。両方とも直角三角形なんだから、残りの角の大きさも両者で同じということになる。こうして、全部の角度が同じ直角三角形同士なので、三角形 BED と三角形 OAB は同じ形だということが言えた。いわゆる相似だ。
今、球を幅 Δx ずつブッタ切ったンだから、長さ DE は Δx。ここで、長さ BD を Δr と書くと、2つの三角形が相似だということを使って
x / r = Δx / Δr
が成り立つので、
Δr = r×Δx / x ・・・(1)
が得られる。
さて、この状況を斜め上から見たのが下図だ。AB を半径とする円環を切り出してきたとすると、右図のようになっているはずだ。Δx は本当はもっともっとずっとずっと小さいので、図では B と D で大きく位置がずれているように見えるが、本当は B のほぼ真上に D がある。そこで、斜線を付けた円環の面積を考えると、円環を長方形と捉えることができるので、この“長方形”(=円環)の面積は、底辺の長さ 2πx に高さ Δr をかけたものになるはずだ。
円環の面積 = 2πx × Δr
ところで、さっき(1)式を見つけたので、上の式で(1)を使って Δr を消すと
円環の面積 = 2πx × Δr
= 2πx × ( r × Δx / x )
= 2πr × Δx ・・・(2)
が得られる。点 A を考えて、球の表面までの距離を x としたが、見事に x は消えた。だから、どこの位置でズバッと切っても、そこで考える円環の面積はいつも(2)式で共通だ。もとの球を等しい高さ Δx でブッタ切ったことにより円環が得られたので、切った円環の面積をすべて足すと球の表面積が得られるはずだ。すべての円環の面積を集めてくるので、(2)式の共通因子 2πr で括って、高さ Δx を全部足すことになる。すべての場所での Δx を足して寄せ集めてくるわけだから、結局、足し算された結果の Δx は、最初の図の左図を見ればわかるように球の直径 2r になる。こうして、球の表面積として
半径 r の球の表面積 = ぶった切った円環の面積を全部集める
= 2πr × (Δx の高さを順にすべて足す)
= 2πr × (球の直径)
= 2πr × 2r
= 4πr2
と、目出度く答えが得られる。
やっていることは、端的に言えば、積分だ。積分は、掛け算してから足し算。