152.壺算

唐突ではあるが、計算のルールを適当に決めてみよう。 2つの自然数を考え、次のような演算を定義しよう。まず、2つのそれぞれの数を素因数分解し、両方の素因数の和を取ることにする。すべての素因数を足した数が元の数より大きければ、その数を演算の答え…

151.2で割り、2で掛け、2数の掛け算

第20回で、2桁同士の自然数の掛け算を簡単に行う方法を備忘しておいた。暗算でできるのはいいのだが、でも、九九を知っていないといけない。 そこで、2で割ることと2で掛けることと足し算を知っていれば、2つの自然数の掛け算ができることを見ておこう。…

150.鎮魂 ~安息を(Requiem)~

半信半疑である。 大学院の1年先輩の京都大学基礎物理学研究所教授の訃報を受けた。2023 年 5 月 16日。誕生日前のまだ58歳。 ウェブで検索するも、そんな記事は見つからず、フェークかと思った。 が、報せを受けた数日後、京都新聞に訃報が掲載され、どうも…

149.アインシュタインと光量子論

第 148 回で、アインシュタインがエントロピー s の表式を導いていたことを備忘した。どんな式だったかと言うと s = kB ln w(u) ・・・(1) ( w(u) = ∫dq1…dqndp1…dpn ) だった。また、エントロピーと絶対温度 T には、エネルギー E を通じて 1 / T = dS(E…

148.アインシュタインとエントロピー

第 143 回で、恒星の形成は無秩序に思える星間ガスから秩序だった恒星が生まれる際にエントロピー増大の法則に反しないことを備忘した。エントロピー S は、系の物質が取り得ることが可能な状態の数 W と S = kB ln W ・・・(1) であることを用いた。これ…

147.電磁放射と水素原子

力学の授業でラザフォード散乱の話をする。 金の原子にアルファ線を照射させて、アルファ線の散乱を測定するという話。1911 年の話だ。アルファ線の正体は当時、知られていなかったが、2 価の正電荷を持った粒子であることは判っていた。 実験は 1909 年頃、…

146.太陽黒点

最近、ある教科書を読んでいたら、おもしろいことが書かれていたので、少し専門的になるが、忘れないうちに備忘しておく(目からウロコの物理学1(牧島一夫著)東京大学出版会)。 ただ、完全に数式を追えなかった。が、数係数が正しく出なかったくらいなの…

145.戦いの奴隷

1998 年から 1999 年にかけて 1 年間、フランスはパリに住んでいた。今は名称が変わったが、当時はパリ第 6 大学と呼ばれていた大学が、ノートルダム大聖堂のやや東側のセーヌ左岸にあり、そこに通って研究を行っていた。 第 6 大学から西へサンミッシェル大…

144.ブラックホールと宇宙の終焉?

ひと昔もふた昔も前。宇宙空間に、わらわらと沢山ブラックホールなんぞあるとは思わず、だからブラックホール同士の衝突なんて極めてまれで、考える意味があるのかと思っていた。 ところが。 2つのブラックホールが連星系になっている場合があり、こういっ…

143.星の形成~ビリアル定理、再び

第141回で、「ビリアル定理」を使った2題噺を記した。 その一つ目は、星の重力崩壊。 この重力崩壊の議論を、今度は星間ガスが重力で集まってきて恒星を形成する過程へと読み替えて考えてみよう。 粒子は無限遠方まで行かず、かつ位置エネルギー V(r1, r2,…

142.2023年

2023という数は素数ではない。わかりにくいが、 2023 = 7×17×17 と、因数分解できてしまう。 2000以降の素数は、2003、2011,2017ときて、次は2027、その次が2029となる。2023年は素数年では無いが、次の素数年は2027年、次いで2029年。2027年と2029年は、そ…

141.ビリアル定理、2題

力学を学ぶと、「ビリアル定理」なるものが出てくる。 学部生時代に勉強していたときには、一体何の役に立つのか、良く判らないままだった。 大学院に進学して、理論宇宙物理学者の佐藤文隆先生の「天体核物理学」かなにかの講義を取っていた時に、確か星の…

140.ランジャタイ

2021年の漫才の大会「M1グランプリ」で、最終決戦に残った漫才コンビ、モグライダーやランジャタイを、最近地上波テレビでよく見かける。M1グランプリ最終決戦登場までは全く知らなかったコンビ達だ。 ランジャタイ、もちろんコンビ名は、奈良の正倉院御物の…

139.ボールの回転と飛距離?~単純化・理想化・簡単化~

High intelligence な県の教育委員会は、当地の大学と連携して、小学校、中学校、高等学校の理科教育の指導力向上を図ることを目的として、「理科教員(コア・サイエンス・ティーチャー)養成・育成事業」を展開している。そこで、当地の大学の教員であるこ…

138.small world

言語化するのが苦手だ。 偶然、BUMP OF CHICKEN の small world という音楽ビデオが目に入った。 最初の 1 小節に勝手に大いに共感した。 ビデオでは明らかに日本の風景が映っているのだが、何故か、フランスのミュージシャンの Jean-Jacques Goldman(ジャ…

137.レーザー冷却

外傷で左目が眼底出血を起こしたことがある。薬で出血を止めたのだったが、外科的な処置としてはレーザー光線を当てて、血管を焼き切って止血するそうだ。事程左様に、レーザー光は“焼き切る”という言葉通り、光のエネルギーを与えて熱するイメージがある。 …

136.2022年・令和4年

2022年が始まった。元号では令和4年。 2022を素因数分解すると 2022 = 2×3×337 大きな素数337が現れる。 令和4年ということにあやかって、4つの連続する整数の和で書いてみると 2022 = 504 + 505 + 506 + 507 となる。これは簡単に求められる。4つの続く整数…

135.同位体

大学院進学のときには、素粒子論研究室に進むか、原子核理論研究室に進むか迷ったが、当時の素粒子論は超弦理論が盛んで、なんだか数学のように見えたので、陽子や中性子やクォークといった実態が出てくる原子核理論に進むことにした。 原子の真ん中には、正…

134.死を想え

コロナ禍の初めのころ、昨年 4 月末には全国一斉にいわゆる緊急事態宣言が出され、人の動きがほとんど無くなった。県をまたぐ移動は自粛を求められ、巣ごもり生活が始まった。 そんな中、春先に父が肺炎となった。コロナ禍のため PCR 検査をされたが陰性であ…

133.春の日差し

新学期が始まるも、感染症禍のため、50 名とかの授業であれば対面講義が何とか可能なのだが、大人数となると対面講義ができない。密を避けるために教室定員の 50 %を目途にすると、100 人を超える大講義では、収容できる教室が限られてきて、どうしてもオン…

132.“幾何”級数

これまで、何度か数列の和が出てきた。近いところでは、2 回前、130 回で、 1 + x + x2 + x3 + x4 +・・・ = 1 / ( 1-x ) 何てのが出てきた。これは、項が進むごとに x を掛けていく、言い換えれば、ある項 xnと、一つ前の項 xn-1 の比 xn / xn-1 が常に…

131.弘法大師

前回、最後に落語の『持参金』を引き合いに出した。 ついでなので、『抜け雀』も見ておこう。 ある宿屋に、身なりの粗末な客がやってくる。金はあるので、先に宿代を払っておこうと言うが、宿屋の主人は、出立のときで良いと言って、客人を泊める。客人は、…

130.金は天下の回り物

経済学を勉強してこなかったので、経済の仕組みが良く判らない。これが「飯米に追われる」あるいは、赤貧を洗ってしまう元になっているのかもしれない。 何かの本で読んだような気がするのだが、どの本に書いてあったのか、覚えがない。興味が無いとそういう…

129.パスカルの三角形とフィボナッチ数とその拡張

前回や第95回で、( 1 + x )n を展開した時の係数を、2項係数と呼び、2項係数の具体を見た。二項係数 nCk は ( 1 + x )0 = 1 ( 1 + x ) = 1 + x ( 1 + x )2 = 1 + 2 x + x2 ( 1 + x )3 = 1 + 3 x + 3 x2 + x3 ( 1 + x )4 = 1 + 4 x + 6 x2 +4 x3 + x4 ・・…

128.2021

二項係数 nCk は、次のように定義される。 nCk = n ! / ( ( n-k)! k! ) ここで、ビックリマークは“階乗”で、 n ! = n×(n-1 )×( n-2 )×・・・×2×1 ただし、0 ! = 1 と定義しておく。 二項係数は、べき乗の展開の時に現れる。 ( x + y )n = xn + n xn-1 y …

127.統計は、難しい

高等学校では、2次元平面内のベクトルを習うはずだ。ベクトルとは大きさと向きを持つ量。 図のように、2つのベクトルVとWがあったとしよう。図では、ベクトルには英字の上に矢印をつけている。X 軸、y 軸の代わりに、p と q と書いているが、矢印のベクトル…

126.時間発展と虚数

2020年も2学期になり、感染症禍の中、対面授業が一部再開された。学生さんも授業参加できるので、授業後に気楽に質問ができるようになったのは好ましい。 ある授業の後、量子力学を自分で勉強しているという学生さんから、量子力学の基礎方程式のシュレーデ…

125.快適な宇宙旅行

Go to トラブル、ミスタイプだ、Go to トラベルを始めとした、Go to カンセーン、今日はタイプミスをよくするなぁ、もとい、Go to キャンペーンが政府の肝いりで行われている( 2020 年 9 月現在)。国内旅行などを推奨して、経済を動かそうという目論見。海…

124.確率は難しい?

高校生の時、数学はまぁまぁ出来た方だと思うが、確率だけは苦労した。条件付確率辺りが特に厄介だった覚えがある。 確率は難しいらしく、有名なところでは「モンティ・ホール問題」というのが知られている。アメリカのモンティ・ホールという人が司会をする…

123.ネイピア数と三角関数

前回と前々回、ネイピア数 e に触れた。 e = 2.7182・・・ という数だ。この数を底にしておくと、ε を小さい数として、対数は ε ≒ log e (1 + ε ) ・・・(1) と近似できた。 今回は、「複素数乗」を見ておこう。 x2 = -1 の解は、実数の中には見当たらな…