26.質量とエネルギーの等価性、再び

 前回、光の運動量が導けた。質量とエネルギーの等価性、E=mc^2 を、山本義隆氏に倣って再び導いてみよう。(c^2 は「cの2乗:c×c」のこと。以下同じ。)

 まず、質量 m [kg] の物体を用意し、両側から振動数 ν [1/s] の光を吸収させる。同じ振動数の光なので、波長 λ [m] も等しく、ゆえに運動量 p = h / λ も等しい。両側から同じ運動量の光がぶつかるので、質量  mの物体は動かず、じっと止まったままだ(図の左の状況)。でも、光を2つ吸収したので、エネルギーは 2hν だけ増えている。一つの光のエネルギーは  hνだった。前回を参照。増えたエネルギーを ΔE とすると

    ΔE = 2 h ν  ・・・(1式)

 今度は、同じ現象を、下向きに速さ v [m/s] で動いている人から見てみよう。この人にとっては、質量 m の物体は上向きに速さ v で動いているように見える(図の右の状況)。図から

    cos θ = v / c

となっている。光の運動量の水平成分は左右の光で打ち消しあうが、上方向の運動量成分

    p cos θ

は左右とも上向きで、質量 m の物体は光を吸収した時に2つ分の運動量

    Δp = 2 × p cos θ = 2pv / c  ・・・(2式)

を上向きにもらってしまう。ところが、質量 m の物体の上向きの速さは変わらないはずだ。f:id:uchu_kenbutsu:20151115220934j:plainだって、図の左の状況を、下向きの速さvの座標で見ているだけなんだから。だって、左の状況では物体 m はピクリとも動かなかったんだから。

 質量 m の物体の運動量は、(質量)×(速度)。今、速度が増えないことが分かったので、物体の質量が増加していなければならない。質量の増加分を Δm とすると、増えた運動量  Δpは

    Δm×v = Δp = 2pv / c

ということ。(2式)を使った。こうして v で割り算して

    Δm = 2p / c

となるが、光の運動量 p は

    p = h / λ= hν/ c = E / c

という前回得た関係があるので、代入すると

    Δm = 2 E / c2 = 2 h ν / c2 =ΔE / c2

となる。光のエネルギー E = hνと、(1式)を使った。こうして、物体は吸収したエネルギーΔE の分だけ質量がΔm 増加することがわかった。これが質量とエネルギーの等価性。増加分だけではなく一般的な関係なので、ΔE → E、Δm → m と書き直して、

    E = m c2

と書かれる。