36.錐体の体積

 小学6年生の息子が、なぜか中学生になってから習うはずの角錐の体積の問題に出くわして、習ってないと怒っていたらしい。

 

 角錐の体積は、

 

    (角錐の体積)=(底面積)×(高さ)÷3

 

そういえば、中学生の時、なぜ3で割ると答えが出るのかさっぱり解らなかった思い出がある。数学の先生のところに聞きに行ったが、当然、中学生に納得できる説明はなく、三角錐だったか四角錐だったか、3つ合わせると一つの角柱になる教育教材を触らせてもらって、確かに角柱の3分の1になるのを見た覚えだけがある。

 

 きちんとわかるには、高校で積分を学ばねばならなかった。

 

 でも、せっかくの機会だから、子供に説明しておこうと思い、半日考える。でもだめだ。積分の考えを使わないとうまく説明できない。でも説明しないよりましだから、一応説明して納得させる。

 

 まずは、1辺の長さ a の立方体を考える。立方体の中心を O として、そこから 8 つの各頂点に直線を引く(図1)。そうすると、底面が正方形、高さが a / 2 の6つの等しいピラミッド型ができる。図1 ではそのうちの 2 つのみ描いた。Oを頂点として、四角錐 OABCD と OADFE。

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 同じ四角錐が 6 個で、一辺 a の立方体を占めるので、四角錐一つ当たりの体積は

 

    四角錐OABCDの体積 = a×a×a ÷ 6

              = ( a×a ) × ( a/2 ) ÷ 3

 

ということ。2 行目を見れば、四角錐の底面積 (a×a) に、四角錐の高さ (a / 2) を掛けて、確かに3で割ったものが、今考えている四角錐の体積だ。底面積 × 高さ ÷3。

 

 でも、これは特殊な四角錐。そこで、四角錐の体積を考えるのに、厚みが零ではないが薄い板を考えて、この板を少しずつ小さくして積み上げて、近似的に四角錐を作ったと考えよう。図2 の (a) だ。

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 さて、1 枚 1 枚の板の面積を半分にして四角錐を再構成する。図2の (b) だ。四角錐の高さはそのまま。板の枚数もそのまま。ということは、板の厚みもそのまま。1 枚当たりの板の体積はそれぞれ半分になっているので、全体の体積も半分になる。要するに底面積を半分にすると四角錐の体積は半分。底面積を  2 倍にすると 2 倍。

 

 もとの四角錐に戻ってから、板を少しずつずらして積み上げる。こうすると、頂点は底面の正方形の中心の上にない、ちょっとずれた四角錐ができるが、高さが変わらない限り、体積は同じ。つまり

 

    (角錐の体積)=(底面積)×(高さ)÷3

 

のままだ。

 

 今、底面を正方形にとったが、三角でも五角でも、はたまた円でも、対応する板の面積が同じであれば、結果的に、得られる錐の体積は同じということもわかる(図2(c))。こうして、角柱であれ円柱であれ、体積は

 

    (錐の体積)=(底面積)×(高さ)÷3

 

となり、[ ÷3 ] がいつも現れることがわかる。はず。これでひとまず、任意の形の錐体の体積を求めたことになる。

 

 一応、息子は納得した。

 

 

 そういえば、三角形の面積は

 

    (三角形の面積)=(底辺(の長さ))× (高さ)÷ 2

 

だった。[ ÷2 ] だ。面積は、細い棒を並べて近似できると思えば図 3 のようになる。

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1 次元の棒を積み上げていったと考える。長さ x のものを足し算していくと考えると、高校で習ういわゆる積分になる。積分の言葉では、

 

    ∫ x dx ~ x2 / 2

 

という形の計算が現れる。1次元の x を積分すると、2分の x の2乗。[ ÷ 2 ] が現れる。

 

 今度は体積。三角っぽい形の立体、すなわち錐体では、板を積み上げていった。板の面積は(縦)×(横)で、次元としては2 次元、x かける x で x2。これを積み上げていくと、足し算することだから積分で書いて

 

     ∫ x2 dx ~ x3 / 3

 

と [ ÷3]が現れる。

 

 三角形の面積を計算するときに、(底辺(の長さ))×(高さ)÷2となったところの2は、平面の次元、「2」が現れているというわけだ。三角形っぽい錐体の体積は、体積だから 3 次元的で、(底面積)×(高さ)÷3となって、3 次元の「3」で割っている。ということは、4 次元空間で三角っぽい立体を考えると、この立体の「超体積」は、(底体積)×(高さ)÷4と、4 次元の「4」で割ることになる。

 

 三角形の面積の公式も、なかなか奥が深い。