46.光の粒子説・波動説

 物理を専攻する学生さんたちは、高等学校の物理の教科書の最後の方で、光の波動性と粒子性を学ぶ。光は、電磁波としての波動の性質を持つが、光電効果コンプトン効果に見られるように粒子性も示すと習う。光の干渉や回折から光の波動性は早くに教わっているが、これは17世紀の話。でも、20世紀に入るとアインシュタインの光量子説がでて、粒子性も併せ持つんだと習ってくる。だから、ニュートンの光の粒子 “説” の話をしても、光量子と勘違いする、というか虚心坦懐に聞いてくれない。

 

 1700年代の初め、ニュートンの時代。ニュートンは光は粒子だと考えていた。粒子と考えて回折現象を説明しようとしている。ここでは光の屈折を考えよう。13回目に取り上げたことだ。この現象を「光の粒子説」ではどう説明しようとしていたか。「光の粒子性」で説明するのではないので、念のため。

 

 光の波動説では、水中での光の速さは、空気中での光の速さより遅くなる。

 

    c空気 > c水中

 

第13回で見たことだ。図の左側。

 

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 光の粒子説では、同じ屈折現象をどのように説明していたか。空気と水の境界面を考える。境界面では空気中も水中も、進む光の速さの成分は同じ大きさを持つと考えられていた。すなわち、斜めに進んできた光の、空気と水の境界面方向の成分、v水平 は、空気中でも水中でも同じ大きさを持つとされていた。光が空気中から水中に入ると図のように曲がる(屈折する)ので、境界面に垂直な水中での光の成分 v垂直水中 は、空気中での境界面に垂直な光の成分 v垂直空気 より大きくないといけない。図を見れば明らか。そうすると、光の粒子説で光の屈折を説明するためには、空気中と水中での光の速さの関係としては

 

    c空気 < c水中

 

と、水中の方が空気中より光の速さは早くないといけないことになる。

 

 空気中と水中での光の速さを測定すれば、光の波動説と粒子説のどちらがもっともらしいかがわかる。実験では、水中の光の速さは空気中より遅くなることがわかった。そうして、古典論の範囲内では光は波動であると結論されることになる。

 

 光が粒子性も併せ持つというのは、量子論まで行かないといけない。でも、こんな歴史の彼方に消えてしまったことは講義されないので、正しい(?)理論がいつも目の前にあって、人の営みが見えないんだろうなぁ。