123.ネイピア数と三角関数
前回と前々回、ネイピア数 e に触れた。
e = 2.7182・・・
という数だ。この数を底にしておくと、ε を小さい数として、対数は
ε ≒ log e (1 + ε ) ・・・(1)
と近似できた。
今回は、「複素数乗」を見ておこう。
x2 = -1 の解は、実数の中には見当たらない。(負の数)×(負の数)は正の数になるので、同じ数を 2 乗したら必ず正の数になってしまい、負の数にはならない。だから-1 になる数はない。そうしたら、解けない方程式が出てくるので、x2 = -1 の解として「虚数」を導入する。-1 の平方根を i と書き、虚数単位という。
i = √(-1)
こうして、ネイピア数の複素数乗を考えてみよう。eiθ を考える。θ は実数とする。eiθ もまた複素数だろうから、
eiθ = x + i y ・・・(2)
と置いてみよう。ここで、x と y は実数、ふつうの数としておき、ここには虚数単位 i は含まれない。ここで、「複素共役」と呼ばれる数、e-iθ を導入しよう。i を-i にしたものなので、(1)と同様、i を-i にして
e-iθ = x - i y ・・・(3)
となる。(2)と(3)をかけると、すべての数の「ゼロ乗」は1だから、e0 = 1 を使って、
1 = eiθ-iθ = eiθ×e-iθ = ( x +iy) (x-iy) = x2 + y2
となっていなければならないことがわかる。ここで、i2 =-1を 使っている。
さて、(1)から、
eε ≒ 1 + ε
だったので、ε= iθ として
eiθ ≒ 1 + iθ
だ。θ が小さいとしたので、θ= 1/1024 あたりから計算しておき、次々掛け算して値を見てみよう。まずは
ei (1/1024) = 1.000 + 0.00097656× i
次々かけるというのは
ei (1/512) = ei (2/1024) = ei (1/1024)×ei (1/1024)
= ( 1 + 0.00097656× i )×( 1 + 0.00097656× i )
=( 1×1 +0.00097656 ×0.00097656×i2 )
+ i×(1×0.00097556 +0.00097656×1)
=0.9999990463 + 0.001953125 × i
という計算をするということ。次は、ei (1/256) = ei (2/512) = ei (1/512) × ei (1/512) を計算する。表にまとめてみよう。近似なので、あまり桁の数がずれていることには気にしないで。
iθ eiθ
-----------------------------------------------------
i/1024 1.0000+0.000097656×i
i/512 0.9999990463+0.001953125×i
i/256 0.9999942779+0.003906246×i
i/128 0.9999732971+0.007812447×i
i/64 0.9998855606+0.015624477×i
i/32 0.9995270100+0.031245378×i
i/16 0.9980779701+0.062461199×i
i/8 0.9922582330+0.124682293×i
i/4 0.9690307268+0.247434064×i
i/2 0.8777969335+0.479542422×i
i 0.5405665220+0.841881735×i
電卓で計算しているので間違えているかもしれない。実際、
i 0.5403+0.8415×i
になるはず。ここからは、この桁で進もう。
i 0.5403+0.8415×i
2i -0.4162+0.9093×i
4i -0.6536-0.7569×i
8i -0.1457+0.9894×i
2 倍ずつしたが、例えば e3i だったら、
e3i = e2i ei =(-0.4162+0.9093×i)×(0.5403+0.8415×i)
= -0.9900+ 0.1411×i
として計算できる。
ざっと見ると、eiθ の実数部分、x は 1 から始まり振動している。虚数部分、y は 0 から始まりやはり振動している。グラフに表すと、
となる。
ここで、eiθ の実数部分が 0 になる θ は 1 と 2 の間、実数部分を右に平行移動した虚数部分が 0 になる θ は 2 と 4 の間にある。そこで、虚数部分が 0 になる θ を π と書く。実数部分が最初に 0 になる θ は π/2 になる。虚数部分が最初に 0 になる θ、すなわち π は
π=3.141592653589793・・・
となる。円周率の導入だ。
さらに、実部、虚部の振動する関数として
x= cos θ、 y = sinθ
と書いておこう。三角関数だ。確かに、x2 + y2 = cos2θ + sin2θ = 1 だ。
こうして、
eiθ = cosθ + i sinθ
オイラーの公式だ。