132.“幾何”級数

 これまで、何度か数列の和が出てきた。近いところでは、2 回前、130 回で、

 

    1 + x + x2 + x3 + x4 +・・・ = 1 / ( 1-x )

 

何てのが出てきた。これは、項が進むごとに x を掛けていく、言い換えれば、ある項 xnと、一つ前の項 xn-1 の比 xn / xn-1 が常に x であるという意味で、各項の数列は等比級数と呼ばれ、今はすべて足しているので、等比級数の和と呼ばれる。

 

 一応証明しおこう、

 

 次の数列の和を考えよう。収束性を考えて、0 < r < 1 としておく。

 

    S(r) = r + r2 + r3 + r4 +・・・+ rn 

      = Σk=1n rk

 

両辺に r を掛けると

 

    r S(r) = r2 + r3 + r4 +・・・+ rn + rn+1

 

となる。辺々引き算をすると、右辺の rから rn は引き算されてなくなるので、

 

   ( 1-r ) S(r) =  r - rn+1

 

が得られる。こうして、欲しい数列の和 S は

 

    S(r) = r + r2 + r3 + r4 +・・・+ rn

      = ( r - rn+1 ) / ( 1-r )

      = r ×( 1-rn ) / ( 1-r )

 

と纏められる。証明終わり。

 

 今、n が無限大まで続く級数の和が欲しいので、今導いた式で n →∞ にすると、r < 1だったので、rn =  0 から、

 

    S(r) = r + r2 + r3 + r4 +・・・

      = lim n  r×( 1- rn ) / ( 1-r )

      = r / ( 1-r )           ・・・(1)

 

となる。

 ついでに、両辺 1 を足しておくと

 

    1 + r + r2 + r3 + r4 +・・・

   = 1 + r / ( 1-r )

   = 1 / ( 1-r )

 

が得られ、r=x と書くと、一番初めにあげた式になっていることが分かる。

 証明再び終わり。

 

 ところで、等比級数のことを、何故 “幾何級数” というのだろうか? どうしてだか良く判らない。

 

 とりあえず、こんなことなんだろうかと、想像してみる。

 

 例えば、p を 2 以上の自然数として、r = 1 / p  ( < 1 ) の場合を考えてみよう。まずは、p=2。このとき、正方形の 2 倍の長方形を分割して行こう。図のように最初、面積1 の長方形を 2 つに分けて、2 つの正方形にする。

 

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正方形の面積はそれぞれ 1/2 だ。そのうちの一つを置いておく。もう一つの正方形を、再び 2 つの長方形に分ける。この長方形の面積はそれぞれ 1/4 だ。できた長方形の一つを先ほどの面積 1/2 の正方形に足す。残りの面積 1/4 の長方形を再び 2 つの正方形に分割する。面積 1/8 の正方形が2つできる。一つを、面積 1/2 と面積 1/4 の方形を足した方に足しておいて、残りの 1/8 も長方形を再び、面積 1/16 の正方形に分割して、一方を足して、他方をさらに分割し、という操作を繰り返すと、結局元の面積 1 の長方形を、1/2、1/4、1/8、1/16、・・・と分割して足したものになる。こうして、数式としては

 

    1 = 1/2 + 1/4 + 1/8 + 1/16 + 1/32 + ・・・・

 

となるはずだ。これは、(1)式で、r = 1/p = 1/2 と置いたもの

 

    S(1/2) = (1/2) / ( 1-1/2 ) = 1

 

に他ならない。

 

 

 この図形を下の図のように並べると、一目瞭然だ。

 

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 次いで、p=3、すなわち r = 1/3 のときを見てみよう。図の面積 1 の長方形を 3 分割し、面積 1/3 の図形を 2 つ並列しておく。

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残りの 1/3 の正方形を 3 等分し、それぞれ 1/9 の長方形の 2 つを、先ほどの面積 1/3 の正方形に並置しておく。残り 1 つの 1/9 の長方形を面積 1/27 の 3 つの正方形に分割し、2 つをさっきの 1/3、1/9 の図形の続きに並べておこう。残った 1/27 の長方形を 3分割し・・・と続けていくと、最初の面積 1 の長方形が、まったく同じ 2 つの系列に分割できる。こうして、各方形の系列の面積を足すと、それぞれ 1/2 になっているはずだ。こうして、

 

    1/2 = 1/3 + 1/9 + 1/27 + 1/81 +・・・

 

が得られる。これは、やはり(1)式で r=1/3 を代入したものになっている。

 

    S(1/3) = ( 1 / 3 ) / ( 1-1/3 ) = 1 / 2

 

 

 えい、p=4 でやっておこう。今度は r =1/4 の場合だ。もう、さっきとおんなじ。図の面積 1 の正方形を 4 分割し、面積 1/4 の図形を 3 つ並列しておく。

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残りの 1/4 の正方形を 4 等分し、それぞれ 1/16 の正方形の 3 つを、先ほどの面積 1/4の正方形に並置しておく。残り 1 つの 1/16 の正方形を面積 1/64 の 4 つの正方形に分割し、3 つをさっきの 1/4、1/16 の図形の続きに並べておこう。残った 1/64 の正方形を 4 分割し・・・と続けていくと、最初の面積 1 の正方形が、まったく同じ 3 つの系列に分割できる。こうして、各、方形の系列の面積を足すと、それぞれ 1/3 になっているはずだ。こうして、

 

      1 / 3 = 1 / 4 + 1 / 16 + 1 / 64 + ・・・

 

 

 

 これを続けると、p を 2 以上に自然数のとき、

 

     1 / ( p-1 ) = 1 / p + 1 / p2 + 1 / p3 + 1 / p4 +・・・    (2)

 

が得られるだろう。ここで、1 / p = r とおくと、

 

     1 / ( p-1 ) = 1 / ( 1 / r -1 ) = r / ( 1-r )

 

なので、(2)式は

 

     r / ( 1-r ) = r + r2 + r3 + r4 + ・・・

 

となって、(1)式が再現される。ただし、“幾何学的”には、r が単位分数、1 / p の場合だけだ。一般に、r は 0 < r < 1 であれば無理数でも良いので、(1)式の証明は強い。

 

 でも、まぁ、一部とはいえ、幾何学的に解釈可能だから、“幾何級数”というのだろうか?