129.パスカルの三角形とフィボナッチ数とその拡張

 前回や第95回で、( 1 + x )n を展開した時の係数を、2項係数と呼び、2項係数の具体を見た。二項係数 nCk

 

    ( 1 + x )0 = 1

    ( 1 + x ) = 1 + x

    ( 1 + x )2 = 1 + 2 x + x2

    ( 1 + x )3 = 1 + 3 x + 3 x2 + x3

    ( 1 + x )4 = 1 + 4 x + 6 x2 +4 x3 + x4

       ・・・・

    ( 1 + x )n = nC0 + nC1 x + nC2 x2 + ・・・ + nCn xn

       ただし nCr = n!/ ( (n-r)! r!)

              = n(n-1)×・・・×(n-r+1) / (1・2・3×・・・×r)

 

と、展開係数に現れた。また、二項係数は、パスカルの三角形として簡単に表された。上の式で、xr の係数を三角形にして並べると

 

             1

            1   1

           1  2  1

          1    3     3    1

         1    4     6    4    1

        ・・・・・・・・・・・・

 

と並ぶ。中の数字は必ず、上斜め右と上斜め左の数の和になっていた。例えば 5 段目の6 は、右斜め上の 3と左斜め上の 3 を足した数になっている。

 

  (1 + x )n の係数、上のパスカルの三角形を左揃えで書いておこう。

  

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 さて、第 99 回で見たフィボナッチ数を思い出しておこう。

 一つがいの兎がいた。1 年目は成長するだけで何も起きないので、1 年後、つまり 2年目も兎は一つがいだ。2 年目中に一つがいの兎を産む。こうして、3 年目(の初め)には 2 つがいの兎がいる。4 年目にも一つがいの兎を産むが、昨年生まれたつがいの兎はまだ子を産まないので、4 年目には全部で 3 つがいの兎だ。5 年目には最初に生まれた兎が成長して一つがいの兎を産む。もとから居た一つがいの兎も一つがいの兎を産むので、5 年目には全部で5つがいだ。こうして数列を書いていくと、

 

    1、1、2、3、5、8、13、21、34、55、89、・・・    ・・・(1)

 

となる。この数列は

 

    F1 (n+2) = F1(n+1) + F1(n)   (n=1, 2, 3, ・・・)     ・・・(2)

       ただし、F1(1) = F1(2) = 1

 

と表される。これが、フィボナッチ数の定義で、フィボナッチ数列と呼ばれるのだった。たとえば、フィボナッチ数の 5 番目は(1)の 5 番目、5 だ。6 番目は 8 だから、(2)式に当てはめ、

 

    F1(7)=F1(6)+ F1(5) = 8 + 5 = 13

 

と、正しく(1)の並びの 7 番目の数が出ている。

 

 第 95 回で見たように、「パスカルの三角形」にもフィボナッチ数列が現れる。図の矢印の並びの数を足すとフィボナッチ数列が現れる。三角形に並べた数字を左端に寄せたので、傾き1の直線状に並ぶ数を足したものになっている。

 

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 さて、(1)、(2)のフィボナッチ数を拡張しておこう。(2)の定義の代わりに、p ≧ 1 の自然数として、

 

     Fp (n+p+1) = Fp(n+p) + Fp(n)   (n=1, 2, 3, ・・・)     ・・・(3)

       ただし、Fp(1) = Fp(2) =・・・= Fp(k) = 1  (ただし、1≦ k ≦ p + 1 )

 

といった数列を導入しよう。たとえば、p = 1 でフィボナッチ数列(2)が現れる。  

 今、p = 2 とすると

 

     F2 (n+3) = F2(n+2) + F2(n)   (n=1, 2, 3, ・・・)     ・・・(4)

       ただし、F2(1) = F2(2) = F2(3) = 1 

 

となり、最初の幾つかを書いておくと、

 

     F2(1) = 1 

     F2(2) = 1 

     F2(3) = 1 

     F2(4) = F2(3) + F2(1) = 1 + 1 = 2 

     F2(5) = F2(4) + F2(2) = 2 + 1 = 3 

     F2(6) = F2(5) + F2(3) = 3 + 1 = 4 

     F2(7) = F2(6) + F2(4) = 4 + 2 = 6 

     F2(8) = F2(7) + F2(5) = 6 + 3 = 9 

 

実は、この数列も、パスカルの三角形に現れる。今度は、傾き 2 の直線状に並ぶ数字を足したものになっている。

 

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 今度は、p = 3 とすると

 

     F3 (n+4) = F3(n+3) + F3(n)   (n=1, 2, 3, ・・・)     ・・・(5)

       ただし、F3(1) = F3(2) = F3(3) = F3(4) = 1 

 

となり、最初の幾つかを書いておくと、

 

     F3(1) = 1 

     F3(2) = 1 

     F3(3) = 1 

     F3(4) = 1 

     F3(5) = F3(4) + F3(1) = 1 + 1 = 2 

     F3(6) = F3(5) + F3(2) = 2 + 1 = 3 

     F3(7) = F3(6) + F3(3) = 3 + 1 = 4 

     F3(8) = F3(7) + F3(4) = 4 + 2 = 5 

     F3(9) = F3(8) + F3(5) = 5 + 2 = 7 

     F3(10) = F3(9) + F3(6) = 7 + 3 = 10 

 

この数列も、パスカルの三角形に現れ、傾き 3 の直線状に並ぶ数字を足したものになっている。

 

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 こうして、どんどん拡張できる。

 

 とりとめのない話をもう少し。次の1行目の関数を考え、べき展開すると

 

    f1(x) = 1 / ( 1-x-x2 )

      = 1 + x + 2 x2 + 3 x3 +5 x4 + 8 x5 + 13 x6 +・・・

 

と、xr の係数にフィボナッチ数が現れている。どうしてそうなるか、見ておこう。

 便宜のために、F(0) = 0 と付け足しておこう。このとき、フィボナッチ数(1)または(2)を用いて

 

    f(x) = Σn=0∞ F1(n) xn

      =  F(0) + F(1) x + F1(2) x2 + F1(3) x3 + F1(4) x4 + F1(5) x5 +・・・

      =    0 + x +  x2 + 2 x3 + 3 x4 + 5 x5 +・・・

 

を導入しておく。両辺から x を引いておくと、F(0) = 0 に注意して

 

    f(x) - x = Σn=2∞ F1(n) xn

         = Σn=2∞ ( F1(n-1) + F1(n-2) ) xn

         = Σn=1∞ F1(n) xn+1 + Σn=0∞ F1(n) xn+2

 

となる。1 行目から 2 行目はフィボナッチ数列の関係式(2)を使い、2行目から3行目は第1項目は n を n+1 と変えて、2 項目は n を n+2 と付け替えて、和を揃えた。第 1 項目に F1(0) = 0 を足しておくと

 

      f(x) - x = Σn=0∞ F1(n) xn+1 + Σn=0∞ F1(n) xn+2

          = x Σn=0∞ F1(n) xn + x2 Σn=0∞ F1(n) xn

          = x f(x) + x2 f(x)

 

となるので、f(x) について解くと

 

    f(x) = x / ( 1-x-x2 )

 

が得られる。こうして、両辺 xでわったものを f1(x) と名付けると、F(0) = 0 に注意して 

 

    f(x) / x = f1 (x)

        = F(1) + F(2) x + F1(3) x2 + F1(4) x3 + F1(5) x4 + F1(6) x5 +・・・

        =  1+ x + 2 x2 + 3 x3 + 5x4 + 8 x5 +・・・

 

 と、欲しい関係が得られる。

 (3)の級数についてはどうだろうか。もう簡単だが、今と同じようにして、

 

   fp (x) = 1 / ( 1-x-xp )

     = Fp(1) + Fp(2) x + Fp(3) x2 + Fp(4) x3 + Fp(5) x4 + Fp(6) x5 +・・・(6)

 

と、フィボナッチ p 数が展開係数として得られる。

 

 さらに、もうひとつ、よもやま話。

 第 77 回で、素粒子物理、弦理論などで出てくる

 

    1 + 2 + 3 + 4 + ・・・ = -1/12

 

を紹介した。正の量を無限に足していくと、負の数が出てくる。

 同じことをフィボナッチ数でやってみよう。フィボナッチ数を無限に足していく。

 

    S1 = 1 + 1 + 2 + 3 + 5 + 8 +・・・

 

少しずらして、同じものを 2 行に並べて書いておこう。

 

    S1 = 1 + 1 + 2 + 3 + 5 + 8 +・・・    

    S1 =    1 + 1 + 2 + 3 + 5 + 8 +・・・

 

上と下、辺々足すと

 

   2 S1 = 1 + ( 1 + 1) +( 2 + 1) + ( 3 + 2 ) + ( 5 + 3) + ( 8 +5 ) +・・・

     = 1 + 2 + 3 + 5 + 8 + 13 + ・・・

     = 1 + 1 + 2 + 3 + 5 + 8 + 13 + ・・・-1

     = S1 -1

 

3 行目は 1 を足して 1 引いておいた。3 行目の・・・までに、再びフィボナッチ数列の無限和が現れている。そこで、4行目のようになる。こうして、

 

    S1 = -1

 

となった。やっぱり負の数になる。

 

 フィボナッチ p 数の和も同じだ。

 

     Sp = Fp(1) + Fp(2) + Fp(3) + Fp(4) + Fp(5) + Fp(6) +・・・

      = Σn=1 Fp(n)

 

同じようにして、少しずらして 2 行に分けて和を書いておくと、

 

2 Sp = Fp(1) + Fp(2) + ・・・+ Fp(p)          + Fp(p+1) + Fp(p+2) +・・・

                          +  Fp(1) +   Fp(2) + ・・・

  = Fp(1) + Fp(2) + ・・・+ Fp(p)            + Fp(p+2) + Fp(p+3) +・・・

  = Fp(1) + Fp(2) + ・・・+ Fp(p) + Fp(p+1)  + Fp(p+2) + Fp(p+3) +・・・-Fp(p+1)

  = Sp-Fp(p+1)

 

こうして、

   

    Sp =-Fp(p+1) = -1

 

まぁ、収束半径を無視して、(6)で両辺 x = 1 を入れたのと同じになる。

 

 なんか、物理から離れてきたなぁ。

 

128.2021

 二項係数 nCk は、次のように定義される。

 

    nCk = n ! / ( ( n-k)! k! )

 

ここで、ビックリマークは“階乗”で、

 

    n ! = n×(n-1 )×( n-2 )×・・・×2×1

 

ただし、0 ! = 1 と定義しておく。

 

 二項係数は、べき乗の展開の時に現れる。

 

   ( x + y )n = xn + n xn-1 y + ( n ( n-1)/2) xn-2 y2 +・・・+ n x yn-1 + yn

       = nC0 xn + nC1 xn-1 y+ nC2 xn-2 y2 + ・・・+  nCn-1 x yn-1+ nCn yn

       = Σk=0n nCk xn-k yk

 

 ここまで準備しておいて、( n + 1 )n+1 を展開しよう。ここでnは自然数で、上の式に対応させるために、x=n、y=1として、さらにべきのnはn+1として、上の式から

 

 ( n + 1 )n+1 = n+1C0 nn+1 + n+1C1 nn + n+1C2 nn-1  + ・・・+ n+1Cn-1 n2

        + n+1Cn n + n+1Cn+1

      = n2 ×( n+1C0 nn-1 + n+1C1 nn-2 + n+1C2 nn-3  + ・・・+ n+1Cn-1 )

        + ( n+1 )! / ((n+1-n)!n!×n + 1

      = n2 ×( n+1C0 nn-1 + n+1C1 nn-2 + n+1C2 nn-3  + ・・・+ n+1Cn-1 )

        + n ( n+1 ) + 1

      = n2 ×( n+1C0 nn-1 + n+1C1 nn-2 + n+1C2 nn-3  + ・・・+ n+1Cn-1 )

        + n2 + n + 1

      = n2 ×( n+1C0 nn-1 + n+1C1 nn-2 + n+1C2 nn-3  + ・・・+ n+1Cn-1 + 1 )

        + n + 1

 

1 行目は式に代入し、2 行目は後ろの2項を残して、n2 で括った。3 番目の等式は後ろの2 項の二項係数の具体的表式を入れて、4 番目の等式は後ろの 2 項をばらし、n2 がまた出てきたので、n2 で括った括弧の中に入れた。そうすると、両辺を n2 でわると、n+1 が余るというわけだ。ただし、n+1 が“余り”となるには、

 

    n2 > n+1 すなわち、n が自然数であるので、n ≧ 2

 

が必要。

 

 じゃぁ、n=2 でやってみよう。このとき n+1=3 なので、

 

    33 = 27 = 4×6 + 3

     = 22 ×6 + 3

 

なので、33 は 22 でわると、3 余る。

 

 こうして、いきなりだが、

 

    20212021  は  20202 で割ると、2021 余る

 

 上の話と関係ないが、ついでに

 

    2021 = 43 ×47

 

と、2021 は 2 つの連続する素数素因数分解できる。

こうして、( x - y )×( x + y ) = x2 - y2 が使えて、

 

    2021 = 452 - 22

   

 

 

127.統計は、難しい

 高等学校では、2次元平面内のベクトルを習うはずだ。ベクトルとは大きさと向きを持つ量。

 図のように、2つのベクトルVWがあったとしよう。図では、ベクトルには英字の上に矢印をつけている。X 軸、y 軸の代わりに、p と q と書いているが、矢印のベクトルを、pと q 方向に分解すると

 

    V= ( Vp , Vq ) , W = ( Wp , Wq )

 

と、“成分表示”できる。2つのベクトルを“足して”、新たなベクトルを作るのは、それぞれのベクトルの成分同士を足して、新たなベクトルを作ればよい。

 

     V  + W = ( Vp + Wp ,  Vq + Wq )

 

図でわかる通り、2つのベクトルからつくられる平行四辺形の対角線にあたる部分が、新たに足し算で作られたベクトルだ。

 

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 さて。

 

 ある疾患に製薬会社 A が作る薬 A か、製薬会社 B が作る薬 B を投与し、効き目を測定した。集団1に薬 A を投与したところ、8% の患者に良い傾向が見られた。ところが、集団2に薬 B を投与したところ、11% の患者に良い傾向が見られた。

 そこで、製薬会社 A は負けじと治験を繰り返し、集団3に薬 A を投与したところ、16% の患者に良い傾向が見られたので満足した。ところが、対抗して、製薬会社 B は、集団 4 に薬 B を投与した治験を繰り返したところ、今度も A の 16% を超える 20% の患者に良い傾向が見られた。

 こうなると、製薬会社 B が作る薬 B を投与するのが良さそうだ。

 データを見ておこう。ここで、

 

    (良くなった割合)=(良くなった患者数)/ (薬を投与した患者数)

 

である。被験者の数も書いておこう。

 

 

A社の作る薬Aを投与

B社の作る薬Bを投与

1回目

集団1 :8%=40/500

集団2 :11%=220/2000

2回目

集団3 :16%=240/1500

集団4 :20%=40/200

 

A 社の作る薬 A を集団 1 に投与した人が 500 人で、そのうち 40 人に良い傾向が見られたので、40 / 500 = 8% という意味で書いている。

 

 1 回目を比べても、 2 回目を比べても B 社の方が成績が良い。B 社の薬 B を使うべきだ。

 

 しかし。

 

 全体で見てみよう。

 A 社の作る薬を投与された数は、1 回目、2 回目、併せて500 + 1500 =2000人。良くなった数は、40 + 240 = 280人。よって、良くなった患者の割合は、

 

    A社: 280 / 2000 = 14 %

 

一方、B 社では、薬 B を投与された数は、1 回目、2 回目、併せて 2000 + 200 =2200人。良くなった数は、220 + 40 = 260人。よって、良くなった患者の割合は、

 

    B社: 260 / 2200 = 11.82 %

 

あれ、A 社の薬 A の方が、よく効くじゃないか。

 

 ちょっと、ベクトルで見ておこう。

 

 被験者の数を p、良くなった患者数をqとしておくと、良くなった人の割合は

 

    q / p

 

だ。そこで、ベクトル P = ( q , p ) を導入しよう。こうしておくと、ベクトル が p 軸となす“傾き” q / p が良くなった人の割合なので、ベクトルが q 軸に沿うようになっている方が、良くなった人の割合が高いということ。

 

 差が見えるように、ベクトル図は少し誇張して書いておいた。縦軸と横軸のスケールも異なって書いている。

 

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1 回目の A 社の集団 1 では

  

    α = ( 40 , 500 ) = ( αp ,αq )

 

1 回目の B 社の集団2では

  

    β = ( 220 , 2000 ) = ( βp ,βq )

 

2回目の A 社の集団3では

  

    A = ( 240 , 1500 )  = ( Ap ,Aq )

 

2回目の B 社の集団4では

  

    B = ( 40 , 200 ) = ( Bp ,Bq )

 

被験者全体で比較するには、A 社では

 

    α + A = ( 40 , 500 )+( 240 , 1500 )=

       = ( 280 ,  2000 ) 

       = ( αp + Ap,αq +Aq )

 

一方、B 社では

  

    β + B = ( 220 , 2000 )+( 40 , 200 )=

       = ( 260 ,  2200 ) 

       = ( βp + Bp,βq +Bq )

 

 図から解る通り、ベクトル α とベクトル β では、β の方が傾きが急なので、良くなった人の割合 ( = q / p ) はベクトル β で表される方が高い。同様に、ベクトル とベクトル では、の方が傾きが急なので、良くなった人の割合は で表される方が高い。

 ところが、α + A β + を比べると、α + の方が傾きが急なので、A 社の方が良くなった人の割合が高いということを意味している。

 

 まとめれば、

 

   αq / αp  <  βq / βp   かつ   Aq / Ap  <  Bq / Bp   

 であっても、

    ( αq + Aq ) / ( αp + Ap )  <  ( βq + Bq ) / ( βp + Bp ) は必ずしも成り立たない  

 

という、分数の基本が現れている。

 

 統計は、難しい。

 

 

126.時間発展と虚数

 2020年も2学期になり、感染症禍の中、対面授業が一部再開された。学生さんも授業参加できるので、授業後に気楽に質問ができるようになったのは好ましい。

 

 ある授業の後、量子力学を自分で勉強しているという学生さんから、量子力学の基礎方程式のシュレーディンガー方程式の時間発展部分に、なぜ虚数単位が現れるのか、という質問を受けた。こんな方程式。

 

    i ℏ ∂ψ/∂t = H ψ   ・・・(1)

 

左辺に虚数単位 i(=√(-1))が現れる。物理なんだから実数の世界なのに、なぜ虚数が出てくるか?

 

 そういえば、少し違うが、学生の時に何故、量子力学波動関数 ψ は複素数なんだろうと考えたことを思い出した。質問の回答にはならないかもしれないが、折角思い出したので、備忘しておこう。

 

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 量子の世界では、粒子に波動性が伴う。粒子である電子の 2 重スリット実験を見ておこう。まず、スリットが一つのとき。図で、1の場合。左からやってきた電子は、衝立の穴、スリット①を通ってくるので、スリットの真正面に電子が来る割合は多いだろう。スクリーンに、電子を捉えたカウント数をプロットしていくと、スリットの前が多いヒストグラムになるだろう。図では曲線で書いておいたが。

 今度は図2のように、スリット②だけ空けておく。そうすると、スリット②の前に到達する電子は多いだろう。

 そこで、今度はスリットを①、②ともに空けておく。そうすると、スリット①と②の前に到達する電子が多く、カウント数のヒストグラムは 2 つのピークを持つかと思いきや、3のように電子がたくさん来るところと全然来ないところが何度も繰り返して現れる。これは、光を2重スリットに通して波の干渉縞を観察する実験で得られるパターンと同じであり、波の干渉縞が現れているのと同じになっている。こうして、電子には、ある種の“波動”が伴うと結論される。

 そこで、①を通った電子の波動の状態を ψ1、②を通った電子の波動の状態を ψと書くことにすると、2 つともスリットを空けたときの波動の状態 ψ は、波は拡がり、重ね合わせができるので、比例定数を除いて ψ=ψ1+ψと書けるはずだ。この電子の波動の状態そのものが電子を観測したカウント数に直接比例するなら、ψ で表される 2 つのスリットを空けた場合のカウント数は、ψと ψの和、つまりふた山になるはずだ。

 しかし実験結果は異なる。

 

 そこで、電子を観測したときに電子のカウントした位置が、電子の波動の状態の2乗に比例するなら、うまく干渉縞が説明できる。2 乗と書いたが、今、複素数が出るかも、という話をしているので、絶対値の 2 乗としておこう。こうして、

 

    |ψ|2 = |ψ1|2 + |ψ2|2 + ( ψ1ψ2* + ψ1*ψ2 )

 

となり、右辺の最初の 2 つの項がそれぞれのスリットの前に来るふた山になるはずのものだが、3 項目の括弧の項が干渉縞を与える項になり、実験を説明できる。

 

 今の 2 重スリットの例では電子が来るところ、来ないところが現れたが、2 重スリットなんか考えなくて、電子がどこにでも等しい割合でやって来る状況を考えてみよう。もし電子に伴う波を実数の波に制限すると、電子がどこにでもやってくるという状況を表すことができない。実数の波はフーリエ解析を使えば、いや、使うまでもなく、サインやコサインの三角関数、あるいはそれらの重ね合わせで書けるはずだ。例えばサインだと、波は

 

    sin (2πνt -2πx/λ)

 

と表される。ここで、ν は波の振動数、λ は波の波長だ。t は時間、x は座標。この波の2 乗、または絶対値の 2 乗は図のように、0 になるところも出てきて、一様な値にならない。

 

         f:id:uchu_kenbutsu:20201025085503j:plain

 

 “波”なのに、2 乗または絶対値の 2 乗が場所に依らずに一定になるためには、サイン、コサインを重ね合わせて複素数の波を作ればよい。例えば、

 

     ψ(x,t) = cos (2πx/λ-2πνt) + i  sin (2πx/λ-2πνt)

       = exp ( i (2πx/λ-2πνt))

 

を用いてみよう。ここで、オイラーの公式

 

   eiθ = cosθ + i sinθ

 

を使った。また、exp ( iθ) = eiθ のこと。このとき、

 

   |ψ(x,t)|2 = exp ( i (2πx/λ-2πνt)) × exp (- i (2πx/λ-2πνt))

       = 1

 

なので、位置 x に依らず一定値となる。こうして、至る所、同じ割合で電子が観測される状況が実現される。

 こうして、粒子に伴う波は、複素数の波を許さなければならないという理解に至る。

 

 さて、粒子に波の性質が伴うのならば、波の伝播を考えることができる。詳細は省略するが、ファインマンはこの状況から経路積分を導いた。最初に粒子がいた位置 rと、次に粒子を観測した位置 rを固定しておいて、2点を結ぶ可能な経路 r(t) について積分する。

 

    ψ(rf , t ) = ∫D r(t) exp(iS/ℏ) ψ(r0 , t0 )

 

ここで、S は作用と呼ばれる量で、また、ℏ= h /2π。hはプランク定数。eiS/複素数とはいえ三角関数の波なので、プラスとマイナスの部分があり、積分していくと殆ど打ち消しあって寄与しない。最も経路積分に寄与するのはあまり振動しないもの、すなわち S が最小になる経路 r(t ) が“粒子”の軌道を与えることになる。これが解析力学で言う最小作用の原理だ。粒子に伴う初期の波 ψ(r0 , t0 ) が eiS/で伝播していくので、eiS/も波だとみなそう。作用 S は解析力学では、空間 1 次元で、かつエネルギーが保存する場合には

 

    S = ∫dt ( p (dx/dt) -E )

     = ∫p dx -E t

 

となる。ここで、p は運動量、x は座標、E はエネルギー。粒子に力が働かなければ、運動量 p は位置 x に依らず一定なので、S は

 

    S = px-Et

 

となるので、波は

 

    eiS/ = exp [ (i/ℏ)・( px-Et)]

 

となる。さっきの複素数の波

    ψ = exp ( i (2πx/λ-2πνt))

 

と比較すると、

 

    2πν=E/ℏ

    2π/λ = p/ℏ

 

が得られる。こうして、ℏ= h / 2π に注意して、

 

    E = hν

    p = h / λ

 

が得られる。左辺は“粒子”のエネルギーと運動量。右辺は“波”の振動数と波長。こうして粒子性と波動性がプランク定数 h を通して結び付く。この関係を、アインシュタイン・ド-ブロイの関係式という。

 

 さて、粒子に伴う波動が

 

    ψ(x, t ) = exp [ (i/ℏ)・( px-Et)]

 

の場合、左辺の“波”から“粒子”の性質、すなわちエネルギー E と運動量 p を引き出すには、

 

     i ℏ∂ψ/∂t = E ψ     ・・・(2)

    -i ℏ∂ψ/∂x = p ψ

 

と、虚数単位 i を含んだ微分演算を行えばよい。一般にエネルギーは、ポテンシァル(位置)エネルギーを V(x) として

 

    E = p2 /(2m) + V(x)

 

となる。ここで、運動量 p を波 ψ から取り出すには、座標微分-i ℏ∂/∂x を波 ψ に施せばよかった。したがって、上の E を波 ψ から取り出すには、波 ψ に作用して粒子の量を取り出すべきと考えると、E を H と書くことにして

 

    E → H = - (ℏ2/(2m)) ∂2/∂x2 + V(x)   ・・・(3)

 

として、(2)は

 

        i ℏ∂ψ/∂t = H ψ

     ここで、Hは(3)式

 

となり、(1)式が得られる。こうして、(1)の左辺の時間発展のところに、虚数単位iが現れる。粒子に伴う波が複素数の波とならざるを得なかった。

 

 こんな説明で、質問の回答になっているかなぁ。

125.快適な宇宙旅行

 Go to トラブル、ミスタイプだ、Go to トラベルを始めとした、Go to カンセーン、今日はタイプミスをよくするなぁ、もとい、Go to キャンペーンが政府の肝いりで行われている( 2020 年 9 月現在)。国内旅行などを推奨して、経済を動かそうという目論見。海外旅行はまだ難しそうなので、折角だから宇宙旅行に出かけよう。

 でも、無常量状態でぷわぷわ浮かんだまま旅行すると、絶対宇宙酔いしそうなので、なるべく快適な宇宙旅行をしたい。

 アインシュタインが、光速に近い物体の運動を記述するにはニュートン力学ではダメだということに気づき、特殊相対性理論を作った。さらに、加速度まで考えると、必然的にニュートンの重力理論を変えて作り直さないといけなくなり、一般相対性理論を作り上げた。その時、加速度系に居る人は、自分が加速度を持つ座標系に居るのか、はたまた、加速度座標系ではない慣性系なのだが単に重力場中にいるのか、区別ができないことに気づき、「等価原理」として一般相対性理論、重力の理論を構成する際の指導原理とした。エレベーターが上に向かって動き出したとき、下向きに押さえつけられるのと同じだ。エレベーターが上向きの加速度を持ち、エレベーターの中が加速度座標系になったので、加速度の向きと反対向きに押し付けられる。でも、ひょっとしたら、エレベーターは静止したままで、急に地球が私たちを引っ張る重力が強くなったのかもしれない。区別ができないはずだ。

 地表面付近にある物体は地球の重力場にいるので、地球が地表面付近の物体を引っ張る引力によって地表面付近の物体には加速度が生じる。物体に生じた加速度を g と書こう。地球の質量を M、地球の半径を R、地表面付近にある物体の質量を m、万有引力定数を G とすると、第 2 回でやったように、(質量)×(加速度)=(力)、つまり

 

    m g = G mM / R2

 

から、物体に依らず、地上の物体は

 

     g = G M / R2 = 9.8 m/s2

 

という共通の加速度を持つはずだと言える。この g を重力加速度と呼ぶ。

 というわけで、常に重力加速度でもって宇宙船が進んで行けば、「等価原理」から、宇宙船の中の人は、実際には宇宙船が加速度座標系なのだが、宇宙船は静止していて地球と同じ重力場中に居るのと区別がつかず、地上にいるのと同じ環境になるはずだ。地球から目的地に向かって一定の加速度 g で進んで行くと、宇宙船の中の人は出発した地球側を「下」として、押さえつけられ、地上にいる重力場と同じ環境になる。目的地まで、ちょうど半分の距離まで宇宙船が到達したら、今度は大きさ g の加速度でもって減速していけばよい。今度は地球側を「上」、目的地側を「下」にして、下側に押し付けられ、地上にいるのと同じ環境になる。ちょうど半分で加速度の向きを反転したので、目的地には速度 0 で軟着陸できるだろう。宇宙船の中では、真ん中の距離のところで加速度を反転させる時だけふわっとなるけど、それ以外は宇宙船の片面を床にして、自由に歩き回れて、地球に居るのと同じ快適な「重力圏」に居るのと同じになる。

 

 とりあえず目的地を隣の恒星、プロキシマケンタウリをまわる惑星、プロキシマケンタウリ b にしよう。地球から 4.2 光年離れている。この惑星は地球の 1.17 倍の質量を持つので、重力の大きさとかではまぁまぁ快適だろう。そのうえ、水が液体で存在できそうな惑星で、生命居住可能領域、いわゆるハビタブルゾーンにある。

 

 今、宇宙船は地球に対して速さ V [m/s] になっているとしよう。地球が静止系として、地球でで測った時間 ΔT [s] と、速度 V で動く宇宙船内での進む時間 Δt は、アインシュタイン特殊相対性理論から

 

   Δt = ΔT×√( 1-V2 / c2 )  ( = ΔT×( 1-V2 / c2 )1/2 ) ・・・(1)

 

の関係がある。ここで、c は光速度、c = 3.0×108 [m/c]。ここで、√( 1-V2 / c2 ) ≦ 1より、

 

    Δt < ΔT

 

となるので、動いている宇宙船内の時間は、地球で経過する時間に比べて遅れる。

 宇宙船の人にとっては、今、速さ V であり、Δt の時間で加速して速さが Δv 増加したとしよう。特殊相対性理論の速度の合成則から(ここでは認めてください)、地球から見た加速後の速さ V'は

 

    V' = ( V +Δv ) / ( 1 + V×Δv / c2 )   ・・・(2)

 

と得られる。宇宙船の加速により、地球に対して ΔV [m/s] だけ速くなっているとすると、もともと速さが V だったので、地球の人にとっては宇宙船は

 

    V' = V + ΔV    ・・・・(3)

 

の速さになったはずだ。こうして、(2)= (3)として、

  

   ΔV = Δv × (1-V2 / c2) / ( 1 + V×Δv / c2)

 

が得られる。地球から見た人が測定する宇宙船の加速度 A [m/s2] は、地球から見た宇宙船の速度の変化 ΔV を、かかった時間 ΔT で割れば得られる。ΔT の代わりに(1)から Δt で表すと

 

   A = ΔV / ΔT = (Δv / Δt )×( 1-V2 / c23/2 / ( 1 + V Δv / c2 )

 

となる。ここで、Δv→0、Δt→0 の極限をとると、Δv/Δt は宇宙船の人が感じる加速度なので、これを a [m/s2] と書いて

 

    A = ΔV / ΔT = a × ( 1-V2 / c2 )3/2   ・・・(4)

 

と、地球と宇宙船の中の人の加速度に関係が付く。

 ここからは、宇宙船に乗る人が感じる加速度 a は一定としよう。宇宙船内の人が感じる等価速度運動だ。

 (4)式から、ΔT→dT、ΔV→dVと書いて積分に直すと

 

    ∫dV / ( a×( 1-V2 / c2 )3/2 ) = ∫dT

 

となり、この積分は実行出来て

 

    T = V / ( a×( 1-V2 / c2 )1/2 )

 

と得られる。逆に V について解くと、さらに

 

    V = aT / ( 1 + a2T2 / c2 )1/2      ・・・(5)

 

が得られる。これは、地球の人が時刻Tの時に、地球の人から見た宇宙船の速さ V である。

 次に V = ΔX / ΔT で、ΔX は地球から見て時間 ΔT の間に宇宙船が進んだ距離としよう。地球時刻 Tで宇宙船が地球から進んだ距離 X が次のように計算出来る。ここで、Vに(5)を使って

 

    X = ∫( dX / dT ) dT = ∫V dT = a ∫ T / ( 1 + a2T2 / c2 )1/2 dT 

     = ( c2 / a ) × ( ( 1 + a2T2 / c2 )1/2 -1 )           ・・・(6)

 

となる。T=0 で X=0 を考慮した。逆に解いておくと

 

    T = ( c / a ) × [ ( 1 + a X /c2 )2 -1 ]1/2   ・・・(7)

 (1)式に戻って、やっぱり積分してみよう。V に(5)を用いて

 

    t = ∫dt = ∫0T ( 1-V2 / c2 )1/2 dT

     = ∫0T 1 / ( 1+ a2 T2 / c2 )1/2 dT

     = ( c / a ) × arcsinh (aT / c )      ・・・(8)

 

積分できてしまう。ここで、arcsinh は、ハイパボリックサイン、sinh逆関数で、ハイパボリックサイン自体は、sinh θ = ( eθ - e-θ ) / 2 が定義。こうして(8)から、さらに逆関数をとって

 

    T = ( c / a ) × sinh( at / c )

 

と得られる。ちなみに、(6)の X の右辺の T に、今得られた T を代入すると

 

    X = ( c2 / a )× ( ( 1 + sinh2 (at/c))1/2 - 1 )

 

が得られ、こうして、宇宙船の地球からの距離 X が、宇宙船の中の人の時間 t と、宇宙船の中の人が感じる加速度 a で表せた。c は光速だった。

 

 さて、4.2 光年先のプロキシマケンタウリ b に行くことを計画しているのだった。2.1光年先まで加速度 a=g で行って、あと半分は加速度 g で減速していく。プロキシマケンタウリ b まで要する飛行時間は、その距離の半分まで行くのにかかる時間の 2 倍になるだろうから、X=2.1 光年として、かかった時間を 2 倍して評価しよう。まず、

 

    X = 2.1光年 × 365.25日 × 24時間 × 60分 × 60秒  ×(3.0×108  m/s)

     = 2.0×1016 m

 

(7)から、宇宙船が 2.1 光年先まで到達したときの地球で測った時間 T は、上の X を代入して

 

    T = 9.19×107 [s] = 2.9年

 

(8)から、2.1 光年まで到達したときに宇宙船の中の人が感じる時間 t は、この T を用いて

 

    t = 5.56×107 [s] = 1.8 年

 

と計算できる。こうして、プロキシマケンタウリ b まで、宇宙船の中の人にとっては 2t = 3.6 年で着く。地球の人にとっては 5.8 年後だが。

 

 4.2 光年先まで、3.6 年と意外と早く着いたので、目的地を変えて、もう少し遠くまで旅行してみよう。地球から 39.4 光年先のトラピスト-1 の周りをまわる惑星、トラピスト-1eへの旅行を計画するのがよさそうだ。光の速さで 40 年弱もかかるのなら行くのも嫌だが、半径が地球半径の 0.92 倍、重さは地球質量の 0.77 倍、よって、地表面での重力加速度は 8.94 m/s2 なのでまぁまぁ良さそうな惑星だ。おまけに平均気温は大気の温室効果を考えなければ-22 度だそうで、地球も大気の温室効果を考えなければ-18 度なので、温室効果ガスがあれば地球並みで、暮らしやすいだろう。トラピスト-1e までの距離の半分まで飛行にかかる時間を計算して 2 倍しよう。今度は、

 

    X = ( 39.4 / 2 )光年 × 365.25日 × 24時間 × 60分 × 60秒 × (3.0×108  m/s)

     = 1.86 × 1017 m

 

となるので、(7)、(8)式から

 

    T = 6.51 × 108  [s] = 20.6 年

    t = 1.15 × 108 [s] = 3.63 年

 

ということは、宇宙船中では 2t = 7.3 年の時間で、40 光年先まで行けるというわけだ。

 

 意外といけるなぁ。オリオン座のペテルギウスが爆発しそうなので、見に行ってみようか。地球から 640 光年くらい離れているので、光の速さで 640 年かかる。でも、宇宙船内の時間は遅れてゆっくり進むので、可能性はありそうだ。計算してみよう。

 

    X = ( 640 / 2 ) 光年 × 365.25日 × 24時間 × 60分 × 60秒 × ( 3.0×108  m/s )

     = 3.02 × 1018 m

 

となるので、(7)、(8)式から

 

    T =1.01 × 1010  [s] = 321 年

    t = 1.98 × 108 [s] = 6.30 年

 

ということで、2t = 12.6 年で、ペテルギウスを見に行ける。地球では 640 年以上経っているのだが。

 ハビタブルな惑星が見つからなければ地球に帰ってくることになるが、宇宙旅行は 25 年強で終えて、地球に帰還できる。しかし、地球は出発後、1284 年も経ってしまっている。今 ( 2020 年)から 1284 年前と言えば 736 年。日本は奈良時代だ。藤原鎌足の子の不比等の子、藤原 4 兄弟、武智麻呂(むちまろ)、房前(ふささき)、宇合(うまかい)、麻呂(まろ)が聖武天皇の下で政治を執っていたころだ。今から 1284 年後はどんな時代なんだろうか。

 

124.確率は難しい?

 高校生の時、数学はまぁまぁ出来た方だと思うが、確率だけは苦労した。条件付確率辺りが特に厄介だった覚えがある。

 

 確率は難しいらしく、有名なところでは「モンティ・ホール問題」というのが知られている。アメリカのモンティ・ホールという人が司会をする「Let’s make a deal」 という番組でゲームが行われていたそうだ。どんなものかというと、ゲームの挑戦者の前に3 つのドアがあり、そのうちの一つのドアの向こうには車が、あと 2 つのドアの向こうにはヤギがいる。車のドアを当てれば、その新車がもらえるというゲーム。ドアが 3 つあり、そのうちの一つに車があるのだから、車をもらえる確率は 1/3 (3分の1)だ。挑戦者がドアを選ぶと、司会者のモンティ・ホールが、選んでいない 2 つのドアのうち、ヤギのいるドアを開ける。そこで、挑戦者はドアを変えることが許される。ドアを変えても変えなくても、正解する確率は 1/3 のままのような気がするが、最初に選んだドアを変えた方が、正解する確率が 2 倍になるそうだ。ある雑誌の読者質問欄に、モンティ・ホールがヤギのドアを開けた後、ドアを変えた方が良いのか変えない方が良いのかをある読者が質問したところ、マリリン・ボス・サヴァントという名の回答者が、ドアを変えた方が良いと回答し、数学者を巻き込んだ議論になったそうだ。しかし、マリリンが正しかった。

 

 どういうことか。

 

 まず、最初にドアを選んだ時、3 つのドアから一つ選ぶのだから、車を選ぶ確率は 1/3だ。司会者が、選ばれなかった 2 つのドアのうちから、ヤギのいるドアを開けてみせる。ここで、初志貫徹することに決めていたら、車が当たっている確率は 1/3 のままだ。

 ところが、必ずドアを変更することにする。

 図で見たら早い。最初に車を選んでいても、必ずドアを変更したらハズレだ。ハズレの確率は、最初に正解のドアを選んだ 1/3 だ。一方、最初にヤギのドアを選んでいて必ずドアを変更すると、確実に車にあたるので、最初にハズレを選んだ 2/3 の確率で車が当たることになる。

 

        f:id:uchu_kenbutsu:20200805110344j:plain

 

 では、ドアを変更しなかったら? 最初に 1/3 の確率で車を選んでいたので、ドアを変更しなければ確率 1/3 のまま、車がもらえる。最初、2/3 の確率でヤギを引いていたので、ドアを変更しなかったら 2/3 の確率のまま、ヤギだ。こうして、最初に車を選んでいた 1/3 の確率で車に行きつくことになる。

 ドアを変更したら 2/3 の確率で車、変更しなければ 1/3 の確率で車。車をもらえる確率が、確かに倍になっている。

 

 今度は、確実にドアを変更するのではなく、半々の確率で、ドアを変更したりしなかったりしたらどうなるだろうか。最初に車を選んでいる確率が 1/3、次に 1/2 の確率でドアを変更したらヤギで、1/2 の確率でドアを変更しなかったら車だ。だから、1/3×1/2=1/6 の確率で車に行きつく。一方、最初、2/3 の確率でヤギの時、1/2 の確率でドアを変更したら車なので、車に行きつく確率は 2/3×1/2=1/3 だ。こうして、車に行きつく確率は、先ほどの 1/6 と今回の 1/3 を足して、1/6+1/3 = 1/2 となる。下図が分かりやすいかな。

 

      f:id:uchu_kenbutsu:20200805110501j:plain

 これは、司会者がヤギのドアを開けた後、2 つのドアを新たに選びなおしたので、正解する確率が、2 つに一つ、すなわち 1/2 の確率に変わったということだ。

 

 うーむ、難しい。

 

 ドアの数を 1000 個にして、そのうちの一つだけ車で、残りの 999は ヤギがいるとしよう。最初、一つドアを選ぶ。1/1000 の確率でしか車に当たっていないだろう。司会者が、残り 999 のドアのうち、ヤギのいるドアを 998 まで開けたとしよう。残るドアは、最初に選んだドアと、司会者が残したドアの 2 つだ。最初に選んだドアは 999/1000 の確率でハズレだったのだろうから、司会者が一つ残したドアに変更した方が当たるだろうというわけだ。

 

 次に、別の問題を考えてみよう。今度はコインだ。コインの表が出たら月曜日に質問され、裏が出たら月曜日と火曜日に質問される。しかし、被験者は日曜日に睡眠薬を飲まされており、飲まされた後の記憶はない。だから、裏が出たときに月曜日に質問されても、質問されたことは忘れてしまって、また火曜日に質問されるということになる。

 質問内容は、「コインが表だった確率はいくらと思いますか?」

コインの表が出る確率も裏が出る確率も、ともに 1/2 だ。だから、起こされて質問されたら 1/2 と答える。

 いや、結論するのは早い。場合の数としては、コインが表で月曜に質問された場合、コインが裏で月曜に質問された場合、コインが裏で火曜に質問された場合、の 3 通りあるが、コインが表だったのはそのうちの一つ、コインが表で月曜に質問された場合だけだ。3 通りのうち、一つなので、質問されたときにコインが表だった確率は 1/3 のはずだ。コイン投げでは表裏出る確率は同じなのに。

 さて、どちらが正しいのだろうか?

 「眠り姫問題」と呼ばれる難題だ。

 

 今度はサイコロ。あなたは大勢の人の中にいて、ランダムに選ばれるとしよう。呼ばれたときにサイコロが振られ、6 の目が出たら 1 万円没収されるが、それ以外の目が出たら 1 万円もらえる。お金の得られる期待値は、

 

   1万円×(5/6:もらえる確率)-1万円×(1/6:没収される確率)= 6666円

 

なので、ラッキーだ。期待値として 6666 円貰えるのだから、参加しない手はない。ただし、6 が出たら、ゲームはそこですべて終了。そのときまでにあなたがランダムに選ばれていなかったなら、まぁ、ゲームに参加できず、諦めよう。

 まず最初、一人呼ばれた。サイコロは 6 以外の目が出て、その人は 1 万円貰って帰った。うらやましい。

 次に 9 人呼ばれた。サイコロは、やっぱり 6 以外。この 9 人も同時に 1 万円ずつ貰って帰った。

 次いで、90 人呼ばれ、サイコロが 6 以外で、いいなぁ。

 次は 900 人だ。その次は 9000 人呼ばれる。最初の一人以外、9人、90人、900人と10倍ずつ呼ばれる。

 いずれ、6 の目が出て、そこに参加していた人は 1 万円ずつ没収される。そうすると、今まで参加していた人の 90 % の人が 1 万円ずつ没収されることになる。たとえば、9000人の時に 6 の目が出たら、それまでの 1+9+90+900=1000人は 1 万円ずつ得したが、最後の 9000人は 1 万円ずつ損し、ゲームの胴元は、9000万円―1000万円= 8000万円儲かる。言い方を変えたら、サイコロの目の出る確率として 5/6 の高確率で 1 万円得られるが、全体の 90 %が 1 万円損するということは、9/10 の確率で損をする。1 万円得られた人の集団に入る確率は、たった 1/10 の確率だということになる。

 あれ、さっき、1 万円貰える 5/6 の高確率はどうした?

 

 誰か、マリリンに聞いてくれないかなぁ

123.ネイピア数と三角関数

 前回と前々回、ネイピア数 e に触れた。

 

    e =  2.7182・・・

 

という数だ。この数を底にしておくと、ε を小さい数として、対数は

 

    ε ≒ log e (1 + ε )     ・・・(1)

 

と近似できた。

 

 今回は、「複素数乗」を見ておこう。

 

 x2 = -1 の解は、実数の中には見当たらない。(負の数)×(負の数)は正の数になるので、同じ数を 2 乗したら必ず正の数になってしまい、負の数にはならない。だから-1 になる数はない。そうしたら、解けない方程式が出てくるので、x2 = -1 の解として「虚数」を導入する。-1 の平方根を i と書き、虚数単位という。

 

    i = √(-1)

 

こうして、ネイピア数複素数乗を考えてみよう。eiθ を考える。θ は実数とする。e もまた複素数だろうから、

 

    eiθ = x + i y     ・・・(2)

 

と置いてみよう。ここで、x と y は実数、ふつうの数としておき、ここには虚数単位 i は含まれない。ここで、「複素共役」と呼ばれる数、e-iθ を導入しよう。i を-i にしたものなので、(1)と同様、i を-i にして

 

    e-iθ = x - i y     ・・・(3)

 

となる。(2)と(3)をかけると、すべての数の「ゼロ乗」は1だから、e0 = 1 を使って、

 

    1 = eiθ-iθ = eiθ×e-iθ = ( x +iy) (x-iy) = x2 + y2

 

となっていなければならないことがわかる。ここで、i=-1を 使っている。

 

 さて、(1)から、

 

    eε ≒ 1 + ε

 

だったので、ε= iθ として

 

    eiθ ≒ 1 + iθ

 

だ。θ が小さいとしたので、θ= 1/1024 あたりから計算しておき、次々掛け算して値を見てみよう。まずは

 

    ei (1/1024) = 1.000 + 0.00097656× i

 

次々かけるというのは

    

    ei (1/512)  = ei (2/1024) = ei (1/1024)×ei (1/1024)

        = ( 1 + 0.00097656× i )×( 1 + 0.00097656× i )

        =( 1×1 +0.00097656 ×0.00097656×i2 )

          + i×(1×0.00097556 +0.00097656×1)

        =0.9999990463 + 0.001953125 × i

 

という計算をするということ。次は、ei (1/256) = ei (2/512) = ei (1/512) × ei (1/512) を計算する。表にまとめてみよう。近似なので、あまり桁の数がずれていることには気にしないで。

 

        iθ       eiθ  

    -----------------------------------------------------

       i/1024         1.0000+0.000097656×i

       i/512          0.9999990463+0.001953125×i

       i/256          0.9999942779+0.003906246×i

       i/128          0.9999732971+0.007812447×i

       i/64           0.9998855606+0.015624477×i

       i/32           0.9995270100+0.031245378×i

       i/16           0.9980779701+0.062461199×i

       i/8            0.9922582330+0.124682293×i

       i/4            0.9690307268+0.247434064×i

       i/2            0.8777969335+0.479542422×i

       i             0.5405665220+0.841881735×i

 

電卓で計算しているので間違えているかもしれない。実際、

 

       i             0.5403+0.8415×i

 

になるはず。ここからは、この桁で進もう。

 

         i             0.5403+0.8415×i

       2i          -0.4162+0.9093×i

       4i          -0.6536-0.7569×i

       8i          -0.1457+0.9894×i

 

2 倍ずつしたが、例えば e3i だったら、

 

      e3i = e2i ei =(-0.4162+0.9093×i)×(0.5403+0.8415×i)

        = -0.9900+ 0.1411×i

 

として計算できる。

 ざっと見ると、eiθ の実数部分、x は 1 から始まり振動している。虚数部分、y は 0 から始まりやはり振動している。グラフに表すと、

 

        f:id:uchu_kenbutsu:20200620133747j:plain

となる。

  ここで、e の実数部分が 0 になる θ は 1 と 2 の間、実数部分を右に平行移動した虚数部分が 0 になる θ は 2 と 4 の間にある。そこで、虚数部分が 0 になる θ を π と書く。実数部分が最初に 0 になる θ は π/2 になる。虚数部分が最初に 0 になる θ、すなわち π は

 

    π=3.141592653589793・・・

 

となる。円周率の導入だ。

 

 さらに、実部、虚部の振動する関数として

 

    x= cos θ、  y = sinθ

 

と書いておこう。三角関数だ。確かに、x2 + y2 = cos2θ + sin2θ = 1 だ。

 

 こうして、

 

    eiθ = cosθ + i sinθ

 

オイラーの公式だ。