2015-01-01から1年間の記事一覧

30.ベクトルの外積(ベクトル積)と四元数

物理の授業をすると、必ずベクトルの解説をしなければならない。高等学校までは2次元平面のベクトルは習うが、3次元空間内のベクトルは習わない。次元が一つだけ増えるだけなのではあるが、高等学校で習わない、「ベクトルの外積」が登場する。 高等学校で…

29.情報量のエントロピー

第27回では、熱の科学に出てくる「エントロピー」を紹介した。状態量を W とすると、ボルツマン定数を kB として、エントロピー S は S = kB log W だった。kB × log W のこと。log は対数で、第28回で説明した。熱力学では、この量は、移動した熱量 Q …

28.対数

前回、エントロピーのところで、対数関数が出てきたので、おさらい。 まず、0 と自然数、1,2,3・・・を知っているとしよう。また、自然数を数えることはできているとしよう。自然数 a から出発して、1 を b 回数える。これは、 a + b ・・・(1) を実行し…

27.エントロピー

熱力学のさわりを、本当にほんの少しのさわりを講義する。熱力学第2法則、エントロピー増大則の説明をする。エントロピーはわかりにくい。まずは言葉から。1865年、クラウジウスが導入した概念で、ギリシャ語で変化を意味するτ(たう)ρ(ロー)ο(オミクロ…

26.質量とエネルギーの等価性、再び

前回、光の運動量が導けた。質量とエネルギーの等価性、E=mc^2 を、山本義隆氏に倣って再び導いてみよう。(c^2 は「cの2乗:c×c」のこと。以下同じ。) まず、質量 m [kg] の物体を用意し、両側から振動数 ν [1/s] の光を吸収させる。同じ振動数の光なの…

25.光の運動量

第3回では、質量とエネルギーの等価性を、大栗博さんの著書から拝借して導いた。今度は山本義隆さんの著書を読んでいたら、似てはいるが別の導き方があったので、忘れないように記しておこうと思う。 漱石の野々宮さんは光の圧力の研究をしていた。まずは、…

24.山の高さ

高校の時には沢山勉強することがあった。短期記憶はピークだったようで、色々覚えたが、すぐに忘れた。沢山のことを覚えなくて良かったのは物理と数学。 地学で岩石の名前がいっぱい出たが、もう覚えていない。必要ならば調べる。 小学6年生の子供が、山はど…

23.100分の2秒と10分の3秒

自分の子供を謙遜して言うとき、謙遜ですぅ、のときには男の子なら「愚息」と言う。出来の悪い息子ですぅのときには「豚児」なんて言い方もある。娘に関しては寡聞にして知らない。うちには息子が一人いる。誓って豚児ではない。 さて。 息子の父親はろくに…

22.呼吸と拡散

動物は酸素を吸って生きている。人間なんかは肺を発達させて、肺胞で酸素を血管に受け渡す。肺胞にある酸素濃度をC1 、血液中の酸素濃度を C2 とすると、濃度差に比例した酸素の流れ、J が生じる。比例定数を P と書いておくと、 J = P (C1 - C2 ) というこ…

21.手で掛け算

掛け算の話題が続いてしまったので、最後にもう一つ。1掛ける一から5掛ける五まで、五より小さいもの同士の掛け算を知っていた場合のこと。6掛ける4とかはちょっと除く。6以上の数同士の一桁の数の掛け算。両手を使ってやってみよう。 六以上の数同士だ…

20.10台同士の掛け算

High intelligent の大学。 理学部物理の2回生の必修科目がある。現代物理学に触れた後、自分達でテーマを見つけ、調べて纏めて発表する。 時々すごいのがある。発光ダイオードは電気を流すと光を発するのだから、逆に光を当てると発電するはずだ、と考えて…

19.2桁の掛け算、10の位は同じで、1の位を足したら10

1の位が5で終わる2桁の数字の掛け算。25×25 みたいなやつ。これは簡単にできた。13歳の証明の夏のこと。10 の位の数に 1 足したものとその数を掛けて、あとに 25 をくっつける。25 掛ける 25 だと、2 に 1 足すと 3 だから、さんにが六。6 に 25 をくっつけ…

18.掛け算。証明に触れた、夏。

割り算の次は、掛け算の話題。小学生の楽しい読書で、こんなことが書いてあった。小学校の木造校舎の2階の図書室はワンダーランドだった。手にした本ごとに知識が詰まっていた。わくわくした 1の位が5で、10の位が同じ数同士の掛け算。15×15、25×25、35×35、…

17.割り切る、7で

小学生の時に読んだ本で、ある自然数が3や4で割り切れるかを判定する方法を知った。ところが、7で割り切れるかどうかの判定法は書いてなかった。実際に割り算をしてみるより仕様がない。 大人(多分ハタチ頃)になってから、7で割れるかどうかの判定法がある…

16.割り切る

小学校1年生のとき、2階建ての木造校舎の1階に教室があった。教室の床も廊下も木で、今から思うと重厚で、いい感じだった。1階に1年生3つのクラスの教室があった。その校舎以外は鉄筋コンクリート製だった。 田中の角さんが教育に力を入れていた。おかげで、…

15.水の波と海岸線

前に、光の屈折の話をした。波の速さが速いところから遅いところに差し掛かると、波の進む角度が折れ曲がる。こんな感じ。 熱海の海岸を散歩した。 幼稚園在園中だが夏休み中だった子供が、突然、見境もなく裸足になって海に突進した。海水に浸かって戻って…

14.投射体の運動

中学校は新設校であった。生徒数が巨大なマンモス校となってしまった近隣の学校から分離する形で、新しい中学校とその校区が設定された。我が家はぎりぎり新設中学校の校区となった。 もともとの中学のほうが近かったんだけど。 中学校まで30分の道のりを歩…

13.並に進路で、屈折、する

光は波として振る舞う。水の波を思い浮かべればよいが、どんぶらこ、どんぶらこと、波の山と谷が交互にやってくる。山から次の山までの長さを「波長」という。ギリシャ文字の λ (ラムダ)で表す。長さは英語で length だが、アルファベットの「 l 」に対応す…

12.プランク分布則

いよいよ、前々回、前回から続く3題話の3題目。 前回までの2回で、「プランク分布」を導く準備ができた。「こたつと日焼けとプランク定数」のプランク分布。 光の粒子とプランク分布 プランク分布とは、振動数 ν (ギリシャ文字のニュー) [1/s] の光がどれ…

11.ある高さでの粒子数、ある速さでの粒子数

ある場所に、ある速さを持つ分子は、どれくらいの数があるのだろうか。だいたい、普通は分子はそこいらでふっと手に取ると、1021個くらいある。それなのに、ある速さを持った分子の個数を大雑把にでも勘定できるのだろうか。 できるから、物理学は素晴らしい…

10.仕事 (work) とエネルギー (energy) と状態方程式 (equation of state)

「こたつと日焼けとプランク分布」で出てきた、プランク分布なるものを考えてみたい。プランク分布とは、振動数 ν [1/s]を持つ電磁波(光)が、絶対温度 T [K] でどれだけの強さで放射されているかを司る。 ちょっと長くなりそうなので、数回に分けて考えて…

9.にんじん

パリで奥さんと1年暮らすことになった。1998年のこと。 1年暮らすとなると、ビザを取ってから入国し、入国してからはフランス国の滞在許可証を手に入れなければならない。 これがかなりハードルが高い。 パリに着いた翌日には、早速地元の警察署に出頭。通…

8.こたつと日焼けとプランク定数

「量子力学」なるものを大学でしばらく講義していた。ミクロの物理的な世界を理解しようとしたら避けて通れない物理学の分野なのだが、そこでは「プランク定数」なる物理定数が登場する。たいてい h と書いている。 日常の単位で h=6.6×10-34 Js。「J」は「…

7.O澤君のこと

高等学校。 マンモス校であった。我々の学年は47人学級が11クラス。上の2学年はそれでも10クラスずつ。ひとクラス、男子が23人、女子が24人。我々の学年は1学年500人を超えていた。戦後20年目に生まれた連中が多い世代、新制高校36期生であ…

6.太陽の寿命~質量とエネルギーの等価性の効用~

高知県立大学、夜間の短期大で授業を担当していた頃、人文社会科学系の学生さん達に、恐るべき課題を課したことがある。で、みんな、熱心に考え抜いてきて、レポートをまとめてきてくれた。ひでき、ではないのが残念だが、感激!! 太陽が光り輝いている。熱…

5.太陽の重さ

しばらく、県立短期大学で「自然科学」という講義を非常勤講師という肩書きで持たせて頂いていた。さすが、high intelligent な県である。夜間の短期大学を県立で持っていた。授業は毎日18時から始まる。1限目は18時から19時30分まで、2限目は19時40分から21…

4.体の大きさ

外国人は蛸(タコ)を食べない。 そんなことは無い。子供のころの知識は歪んでいたような気がする。たぶん今もそうだけど。 ラテン系のヨーロッパ、特にフランス、ポルトガルにそこそこ滞在する機会があった。 ポルトガル人は良く蛸を食べる。Arroz de polvo…

3.質量とエネルギーの等価性

母は三四郎に、知り合いの従兄弟が学士さんだから訪ねて行けという。三四郎は、学士さんながら研究を続けている野々宮さんを訪ねる。 野々宮さんは三四郎に説明する。 『「昼間のうちに、あんな準備(したく)をしておいて、夜になって、交通その他の活動が…

2.地球の重さ

学生さんのレポートをチェックする。今回は、地球の質量を推定する問題を与える。毎年、春の時期の出題だ。有効数字の確認と、出てきた答えがそれらしいかの感覚を掴んでもらうための簡単な課題。 ニュートンの運動法則は、 (力)=(質量)×(加速度) と…

1.雨と霞

雨の日には視界が悪くなっていることを良く経験する。しかし、大粒の雨が降っているからといって、必ずしも霧雨のときのように辺りが煙るように見えにくい、というわけでもなさそうだ。 ちょっと考えてみる。 雨の水の量全体を体積V 立方メートル([m3])と…