2019-01-01から1年間の記事一覧

111.平方数の和、再び

第 88 回で、平方数の和の備忘をしておいた。すべての自然数は 4 つの自然数の 2 乗の和で書ける。さらに、3 つの自然数の和で書けるための条件、2 つの自然数の和で書けるための条件を記しておいた。 数字に強い人はいるものだ。最近も、以下のようなことを…

110.古典電子とスピン

前回、トムソン散乱の話で、古典電子半径の話がでてきた。復習しておこう。 電子に半径 a があったとする。そうすると、電荷 ‐e を持った電子が、電子の外側に作る電場による静電エネルギー E は、計算すると E = e2 / ( 8πε0 a ) ・・・(1) となる。この…

109.一つの数式の理解は複数

大学の学部生のころ、5 人ほどで量子力学の自主ゼミをやっていた。自主ゼミとは、文字通り、数人が自発的に集まって、自主的にテキスト購読を行うものだ。2 回生の頃からランダウ・リフシッツの「量子力学」の教科書でゼミをしていた。順番にレポーターを決…

108.サンピエトロ大聖堂とローマ教皇と移民の傘売り人

もう何年前になるだろうか、イタリアに行ったときのことだ。その折、時間を見て、バチカン市国に入り、ローマカトリックの総本山、サンピエトロ大聖堂を訪れた。キリストの使徒、ペトロの墓の上に建てられた大聖堂だ。 「Tu es Petrus, et super hanc petram…

107.情報送信の効率化

第 29 回で、情報量のエントロピーについて備忘した。情報量として、Yes or No、または 1 と 0 を考えると、スイッチの on と off で表せる。「情報量」はどれだけ「情報量のエントロピー」を減らせるかで数えればよい。情報量のエントロピーは底が 2 の対数…

106.一級河川

2019 年 10 月 12 日、13 日は、日本スイミングクラブ協会主催の、ブロック対抗水泳競技大会が浜松で行われる予定であった。全国を 10 のブロックに分けて、ブロック対抗で競う競泳の大会で、息子は 2 年ぶりに、四国選抜のメンバーに選ばれていた。楽しみに…

105.コミュニケーション

1998 年 7 月 8 日に日本を出て、香港経由で翌 9 日にシャルル・ド・ゴール空港に降りたった。その日から 1 年間、フランスはパリで暮らすことになった。空港には、1 年間お世話になるパリ第 6 大学、またの名をピエール・エ・マリーキュリー大学 ( Universi…

104.ボイルの法則とニュートン

もう 10 年近く前になるが、「自然科学の歴史」というオムニバス講義を受け持っており、ニュートン力学の形成史と熱の科学の形成史を担当していた。物理学理論の専門家であって、科学史については研究対象としていないが、でも、まぁ、利用はしていて知識も…

103.数字の並びから法則へ

原子から放出される光は、特定の波長を持っている。たとえばナトリウムならおおよそ 589 nm(ナノメートル)で、橙黄色、高速道路のトンネルなんかに使われている、いわゆるナトリウムランプだ。ネオンだと、いくつかの波長が混ざっているが、だいたい赤橙色…

102.戦後74年

お風呂メインで行っているスポーツ施設で、お風呂上りに、4 台あるマッサージ機のうちの 1 台でぐりぐりしていたところ、別の 2 台にご老人がお二人並んで、ぐりぐりされておられた。年齢は違っているようだが、お一人がもう一人に話しかけていた。聴くつも…

101.レポート分析

学生さんにレポートを課すことが良くある。そして、曲者のレポートチェック。 最近の学生さんは真面目なのでそう云うことは無いのだが(と期待しているのだが)、長く教員をしていると、コピー・アンド・ペーストが散見されることがあった。物理学のレポート…

100.恒星になれなかった木星

概論の授業の最終回は、ミクロの物理学、量子科学に触れて、基礎方程式であるシュレーディンガー方程式を見せて、トンネル効果なんか説明して、無からの宇宙生成の可能性まで話して締めていたのだが、昨年やったら、難しすぎてわからないと、評判が大層悪か…

99.黄金比

息子も高校生となり、数学の先生から授業以外の数学の話を聴く機会が増えた様だ。先生が黄金比の話をしたようで、詳しくなっていた。教科書以外の知識が学問への導入になることは多い。 そういえば、自分自身も、正五角形の黄金分割の話を何かで読み、興味を…

98.ブランコ

ブランコ、児童公園なんかに備えられているあれだ。 ブランコの存在は、古くは紀元前2000年より以前に遡るらしい。メソポタミア文明、今のシリアあたりのシュメールだ。もとはどうやら、宗教儀礼、特に豊穣祈願で使われていたらしい。葡萄が生産される地方で…

97.ライプニッツの積分法

ニュートンとは独立に、微積分法はライプニッツによっても発見されている。ニュートンによる積分法を説明したのに、ライプニッツに触れないのは片手落ちの様な気がするので、ライプニッツによる求積(積分)法を記しておこう。 ライプニッツは、ある曲線の下…

96.ニュートンの流率法

物理の授業をしていると、どうして微分や積分が物理に出てくるんだ、という文句が学生さんからよく出てくる。 でもね、力学の問題を解くために微分積分が生み出されたんだから仕方がない。 ライプニッツも同時期に微分積分学を考案していたものの、ニュート…

95.パスカルの三角形からニュートンへ

nを自然数として、( x + y )n の展開は比較的容易にできるが、逆の因数分解はなかなか難しい。 高校生になった息子が、 x4 + 4 y4 を因数分解せよ という問題に出くわし、どうしたらよいかわからないようだった。 物理の研究を30年近くしている身にも、こん…

94.゛機械学的”方法による求積

新学期が始まり、いつも2~3週間したら、黄金週間という名の連休が入る。今年、2019年は改元があり、10連休になった。 ずっと以前、大学に着任してまだ 5 年ほど、助手の頃に、共通教育という名の一般教育の授業で、「数学と物理学の進歩」だったか、「物理…

93.授時

第69回で、宇宙観の進展について備忘した。どうしても西洋中心の宇宙観になってしまうが、中国ももちろん古くから進んでいた。 初期中国では、宇宙の空間的構造としては 3 つの説が唱えられていた。1 つ目は天地は平面的とした蓋天(がいてん)説。天と地は…

92.漱石から採る物理の問題

子供が、入試勉強で、国語や英語の長文問題では問題を解く時間が無くなるとぼやいていた。そういう時は、問われている問題を先に読んでから、問題文である長文に目を通したら、どこに答えが潜んでいるかわかりやすい、と助言しておく。長文読んでから問題を…

91.CP対称性の破れ

前回、鏡のこちらと向こう側では自然法則は同じでなくなり、こちらの世界で起きる事象が、あちらの世界では禁止されることがあることを、コバルト 60 の放射性崩壊を例にして、見た。最後に指摘しておいたように、さらに、粒子・反粒子を入れ替えると、鏡の…

90.鏡の向こうとこちらの物理

前回、89 回では、鏡の向こう側が何故、右と左が反対に見えるのか、あるいはそう感じるのかについて考察した。人とかだと、あからさまに左右が違う。例えば顔のほくろの位置とか、心臓の位置とか。でも、基本の基本の自然法則までたどれば、自然は鏡のこちら…

89.鏡の向こう側

とあるテレビの番組を見ていたら、「鏡に映すと右と左が反対になるのは何故か?」という質問があり、その回答が「よくわかっていない」となっていた。 えっ、まだわかってないの??となってしまった。 まぁ、設問に対する回答としてはそうなのかもしれない…

88.平方数の和

第30回で四元数に触れた。少し復習しておこう。 まずは、普通の数。a と b という二つの数があったとしよう。数字 a の“大きさ”を絶対値と言って、|a| と書くと、 |a| |b| = | ab| になるのは、ほぼ当たり前だ。 次に複素数。2 乗したら-1に なる“虚数単位”…