67.適応

 人類の進化も面白い。専門家ではないので、色々間違って理解しているところは多々あると思うが、備忘のため記す。

 

 今から300-400万年前、東アフリカにはアウストラロピテクス属に分けられる2種類の猿人がいたそうだ。一つはアウストラロピテクス・アファレンシス、もう一つはアウストラロピテクス・アナメンシスと呼ばれている。

 

 300万年前に赤道地帯の乾燥化が始まると、これらの猿人は環境変化に適応するように、進化を余儀なくされた。

 

 アファレンシスはあごと歯を発達させ、堅い植物の実まで食べられるように進化して、乾燥化に適応しようとする。

 まぁ、勝手に進化するんだから、自分たちでそうしようと思ったわけではないが。

 ついでに、体も発達させ、大きくなった。アファレンシスからは、ジンジャントロプス・アエティオピクス、さらにジンジャントロプス・ボイセイと進化していくことになる。

 

 一方、アナメンシスは、体の大きさそのままに脳を発達させる道を選ぶ。

 まぁ、自分たちでそうしようと思ったわけではないが。

 そして、それまでの植物食から、昆虫食を含む雑食へと変化させ、何でも食べて乾燥化に適応しようとした。

 

 昔、「探偵ナイトスクープ」という関西ローカル番組で、大阪のおばちゃんに食べ物では何が好きかを尋ねる企画があったが、一様に「なんでも食べます」と返事が返ってきたのを不意に思い出す。進化の最終形か?。

 

 アナメンシスからは、ホモ・ルドルフェンシス、さらにホモ・ハビリスへと進化していくことになる。

 

 結局、乾燥化に耐え、後に地球上を跋扈することになるのは、脳を発達させて雑食化したアナメンシスの系統で、後にホモ属が生まれる。他方、大型化してあごを発達させたジンジャントロプスの系統は滅んでしまう。生き延びたホモ属は、ホモ・エレクトッスから我々ホモ・サピエンスへと進化することになる。「食」より「知」が優ったのかも知れない。

 

 アナメンシスは知を増大させるため、脳を大きくする選択をしたことになった。脳は、ニューロンと呼ばれる神経細胞からできている。軸策と呼ばれる1本の長い突起を持つニューロン同士は、微細な間隙を持って結合している。その結合の場所は、シナプスと呼ばれる。電気信号化された情報はニューロンを伝わるが、シナプスでは間隔があいているので、そのままでは電気信号を伝えることができない。

 そこで、シナプスではある種の化学物質を放出することで、次のニューロンに再び電気信号として情報を伝えるようにできている。

 

 この脳に良く似ているのが眼だ。眼は、脳が外界に出ているような感じの器官と言える。網膜は脳の表皮に似ているらしい。実際、発生学的には、脳の一部が突出したものが眼になり、眼は神経系の一部といえる(らしい)。網膜には、桿(かん)細胞と呼ばれる細胞が含まれてる。このあたりは第9回で書いた。網膜で受けた光信号を直接脳に送るのではなくて、ある程度の情報処理を行ってから、視神経を通して脳の視覚野に送られるそうだ。

眼は、一部、脳機能の肩代わりもしているようだ。

 

 ヒトは、極度に脳を発達させたので、突然変異と自然淘汰による進化に任せることなく、脳を使って考えることにより、環境変化に適応するようになったようだ。進化による環境変化の適応速度より、断然早く適応していくことができるのだろう。こうして、現在の文明にまで到達したわけだ。

 

 400万年前に食に勝った知によって、私たちは自然の姿を垣間見ようと現在も努めている。