82.天の川銀河の星の数

 地球は太陽の周りを回っている。地球はほぼ円軌道で太陽の周りを回るので、地球と太陽までの距離 RE、およそ 1 億 5 千万キロメートルを半径とした円周を、1 年、365 日かけて 1 周する。ということは、1秒あたりの速さ vとして、(速さ)×(時間)=(動いた距離)から 

 

  vE  × 60 秒 × 60 分 × 24 時間 × 365.25 日=2π RE

 

となって、地球の速さ vが計算できる。vとしておよそ、30 km / s 、秒速 30 km という値が得られる。結構速い。

 

 では、太陽は静止しているのか? 天文学の観測では、私達の天の川銀河の半径はおよそ 5 万光年あり、太陽は中心から 2 万 5 千光年あたりに位置し、天の川銀河もろとも回転している。1 光年はだいたい 9.47×1012 km。太陽の速さ vは秒速 220 km 、vS = 220 km / s だそうだ。ということは、太陽は X 年で天の川銀河を 1 周するとして、天の川銀河の中心から太陽までの距離を RS = 2 万 5 千光年 = 2.37×1017 kmとして

 

  vS × 60 秒 × 60 分 × 24 時間 × 365.25 日 × X 年=2π RS

 

から、vS と RS の数値を入れて計算すると

 

  X = 2.14×108  ≒ 2 億 1 千万年

 

となる。およそ 2 億 1 千万年ごとに 1 周している。地球は生まれてから 46 億年経っているので、地球は太陽とともに私達の天の川銀河をだいたい 20 回くらい回っているという勘定になる。細かい数値がいい加減なので、あくまで大体。

 

 第 5 回のところで、惑星が太陽の周りを回っていられるのは万有引力のおかげであり、ニュートンの運動法則から、太陽の方向に向く向心加速度が生じることを見た。万有引力定数を G として、太陽の質量を MS 、地球の質量を ME 、地球と太陽までの距離 RE地球の速さ vとして、

 

  G MS ME / RE2 = ME vE2 / RE  ・・・(1)

 

が成り立つ。

 

 太陽は、太陽より内側にある天の川銀河の星々からの万有引力を受けて、天の川銀河を回っている。太陽に影響を及ぼす、天の川銀河の中心から距離 2 万 5 千光年内にある星々の全質量を M とし、天の川銀河の中心から太陽までの距離を RS太陽の速さを vS として、

 

   G M MS / RS2 = MS vS2 / RS   ・・・(2)

 

が成り立っているはずだ。(1)と(2)の比をとって、ちょっと整理すると

 

   M / MS = ( vS2 / vE2 ) × (RS / RE )

 

が得られる。右辺に今まで出てきた数値を入れると

 

   M / MS = 8.5 × 1010 ≒ 1011

 

となる。ということは、太陽の質量の 1011 倍の質量が、太陽より内側の天の川銀河にはあるということだ。全部太陽と同じ重さの星としたら、太陽と同じ恒星が 1011 個あるということだ。1000 億個!!

 

 太陽は天の川銀河の半径 5 万光年の半分、2 万 5 千光年のところにあるというのだから、1000 億個の恒星は天の川銀河を円盤として、面積 1/4 のところにあるということだ。ということは、太陽より外側にある恒星は、内側の 3 倍、3000 億個あるというわけだ。あわせて 4000 億個。

 いや、天の川銀河は中心部に星が集まっていて、外側は、腕のような構造があって、一様に星が分布しているわけではない。ちょっと間引きして考えて、天の川銀河には3000 億個くらいの恒星があるだろうと見積もれる。

 

 大きな数なので、甲子園球場何杯分とか言ってくれないと、ピンとこない。

 

 甲子園球場はドームが無いので、容積がわかりにくい。夏になると、今年のビールの消費量は甲子園球場〇杯分とか聞くが、あれは摺り切り入れてのことなんだろうか。

 東京ドームは屋根があるので、容積が記されている。124 万立方メートル、1.24 × 106 m3 だそうだ。甲子園球場の面積は東京ドームの面積の 80 % だそうなので、そのまま体積になおすと、0.83/2  = 0.715、およそ 72 % と見ておこう。甲子園球場に野球のボールを詰めてみよう。屋根が無いので、てんこ盛りに積み上げる。野球のボールは半径3.66 cm くらいの球なので、その体積は 4πr3 / 3 だから、およそ 205 cm3 =2.05 × 10-4 m3 といったところだ。球を積み上げていくと必ず隙間ができる。もっとも上手く入れて行っても、全体積の 74 % くらいしか使えない。ケプラーの細密充填問題で、充填率は π/ √18 ≒0.74 になる。

 こうして準備が整った。野球のボールを甲子園球場に入れて積み上げると、何個入るか?

(東京ドームの体積 × 72 %) × (細密充填率) / (野球のボールの体積)で、甲子園球場(東京ドームの体積 × 72%) の容積に入る野球のボールの個数がわかる。ただし、外から見たら甲子園球場には屋根が無いので、ボールはてんこ盛りになっているが。

 

   1.24 × 106 × 0.715 × 0.740  / (2.05 × 10-4 ) = 3.2 × 10

 

およそ、30 億個だ。

 

 ということは、天の川銀河にある恒星の個数、3000 億個は、野球のボールに換算して甲子園球場 100 杯分だ。

 

 多いなぁ。

 

 8 月 17 日は、2018 年の七夕、旧暦 7 月 7 日。織姫(ベガ)と彦星(アルタイル)は天の川を挟んでいる。

 

 

   f:id:uchu_kenbutsu:20180813102916j:plain

         Wikipedia より、天の川銀河想像図