42.熱量とエネルギーの等価性
前回、熱量の単位、cal (カロリー)と、エネルギーの単位、J(ジュール)の換算を使った。
1 cal = 4.18 J
エネルギーの単位に名を残すジュール(1818-1889)の業績である。高等学校では、「羽根車」の実験で説明されている。水槽に水を入れておき、その水中に羽根車を入れておく。羽車を回転させると水がかき回される。羽根車を回転させるために質量 m [kg] の重りを高さ h [m] だけ落下させる。図のポンチ絵の感じ。失われた重りの位置エネルギー mgh 分が熱量に変わり、水の温度を上げる。ここで、g=9.8 m /s2 は重力加速度。1g(グラム)の水を 14.5 oC から 15.5 oC まで上げるのに必要な熱量が 1 cal である。ジュールは羽根車の実験で、熱量とエネルギーの等価性、もしくは熱と仕事の等価性、およびそれらの換算値である「熱の仕事当量、1 cal = 4.18」を決定したと習う。
「自然科学の歴史」という授業を担当していたときに、熱の科学の発展を講義することになり、少し勉強した。山本義隆さんの著書を主に参考にしたが、ジュールは何度も「熱の仕事当量」を色々な方法で検討していたことを知った。執念である。
ジュールと言えば「ジュール熱」の発見が有名かもしれない。電気抵抗 R [Ω(オーム)]の導線に I [A(アンペア)] の電流を流すと、R × I2 だけの熱(エネルギー)が発生するというやつ。これも高等学校で習う。
「ジュール熱」の発見は 1841 年。
ほかにも、電磁誘導と発熱現象の発見も行っている。これは 1843 年。
熱の仕事当量であるが、まずは 1843 年に、電磁誘導と発熱現象を発見した装置を利用して、コイルの回転に要する仕事の測定を行っている。ジュール熱の法則を利用し、熱と仕事は
1 cal = 4.50 J
という値を得た。
続いて、水が細管を通り抜けるときに発生する摩擦熱を測定し、
1 cal = 4.14 J
という値を得ている。
1844 年には空気の圧縮による発熱を利用して、
1 cal = 4.29 J
を得る。
1845年に、高等学校で習う羽根車の実験を行い、
1 cal = 4.78 J
を得る。
1847年には羽根車の実験を改良し、
1 cal = 4.203 J
を得る。
1849年にはさらに改良し、
1 cal = 4.15 J
を得ている。
1843 年から 1849 年まで、つごう 6 回値を出している。
現在では
1cal = 4.1855 J
と測定されている。