70.曜日の名前

 日本では曜日は、日、月、火、水、木、金、土、と、太陽、月、火星、水星、木星、金星、土星の5惑星だと連想する。日、月は除いて、そもそも、5惑星の名前は、中国の五行説から採られているので、五行とも言えるが、基本、惑星である。

 

 どうしてかというと、こうしてだ。

 

 1日を24に分け、今だと24時間だが、夫々の時間を、地球から見て地球を1周する時間の長い天体で代表させる。今だと太陽を周る公転周期だ。

 最初の1時間目は、公転周期30年の土星で対応させよう。次の1時間、つまり2時間目は、公転周期12年の木星。次の1時間、3時間目は公転周期687日の火星。次の1時間は公転周期1年の地球だが、地球から見ているので1年かけて「地球を回る」太陽、日(にち)だ。次の1時間、5時間目になっているが、ここは公転周期約半年の金星、次の1時間は公転周期3ヶ月の水星。次の1時間は1か月で地球を回る月。これで7時間目まで来たので、次は土星に戻り、繰り返していく。最後の24番目の時間は火星になる。

 翌日の第1時間目は火星の次の太陽(日)から始まり、最後の24番目の時間は水星が対応する。

 翌日は水星の次の月から始まり、木星で終わる。

 翌日は木星の次の火星から始まり、金星で終わる。

 翌日は金星の次の水星で始まり、土星で終わる。

 翌日は土星の次の木星で始まり、太陽で終わる。

 翌日は太陽の次の金星で始まり、月で終わる。

 で翌日は月の次の土星で始まり、火星で終わる。

 こうして一巡した。そして、1日の最初の第1時間を代表する星を見ると、土星、太陽、月、火星、水星、木星、金星となるので、最初の時間の星の名でその日を呼ぶと、土、日、月、火、水、木、金と1週間となる。

 

 曜日の名前と天文学、ここでは公転周期の並びであるが、ちょっと関係している。

 

 研究で初めて中国に行ったのは、1995年、天安門事件からは6年たっていた。また、第2次世界大戦、細かく言うと日中戦争終結50年の年。大連と北京で国際会議があり、折角だから両方に出席・発表した。北京の会議は核物理の最大の国際会議だったので、会議中のエクスカーション(遠足)は、1日、バスを数台連ねて参加者を乗せ、パトカーの先導ですべての信号を無視して万里の長城へ連れて行かれた。そのあと、明の十三陵へと再びパトカー先導でバスは連なっていった。さすが中国。日本では考えられない。

 その中国のホテルで、読めもしないが新聞を眺めたり、テレビを見たりしていたら、どうも曜日の呼び名が日本と違うことに気づいた。テレビで、番組の宣伝をしているとき、どうやら何曜の何時からと告知している様なのであるが、曜日が違う。

 だんだんわかってきた。

 日曜日は「星期天」。

 続いて、月曜から土曜までは数で数えて、月曜は「星期一」、火曜は「星期二」・・・で、土曜は「星期六」。

 うーむ、陰陽五行は中国発祥なんだがなぁ。

 

 曜日を数で数えると言えば、共同研究者がいてちょくちょくお世話になるポルトガルもそうだ。日曜日はdomingoで、これはキリスト教からきている「主の日」。月曜はsegunda feiraで、「第二の日」。日曜が1番目なので、月曜は2番目ということね。中国と一つずれる。以下、火、水・・・、と、第3の日、第4の日と続く。têrça feira、quarta feira、

quinta feira、sexta feira。sextは六で、この日が金曜日。土曜はsábadoで、キリスト教起源の「安息日」、Sabbatumから。

 もともとユダヤ教では7日目に神は休んだので、主の日を第1日として7日目の土曜日が安息日だった。キリスト教では日曜日が安息日となっているが、曜日の名称に以前の名残が見られる。

 

 なぜ、ラテン語4姉妹のポルトガル語で曜日の数え方が土日を除いて数なのかは知らない。あとの3姉妹、フランス語、イタリア語、スペイン語は似ている。

 

 ちょっとだけできるフランス語で見てみる。

 

 ボンジュール!!

 

 日本同様、月や惑星を使っている。

 日曜はキリスト教起源で、主の日。dimancheだ。月曜は月、lune からlundi。火曜は火星mars からmardi。まぁ、惑星と神様が一体化しているので、軍神mars(マルス)だ。火星は朱く見えるので、火の燃え盛る戦争を連想し、火星は軍神に対応付けられたのだろう。水曜は水星のmercureからmercredi。ローマの水星の神はmercuriiだ。ギリシャ神話ではヘルメス。木曜は木星のjupiter から jeudi。ジュピターはローマ神話最高神ユピテルだ。ギリシャ神話だとゼウス。金曜は金星のvénus から vendredi。愛と美の女神ビーナスだ。土曜日は土星のsaturneから来ているのかと思いきや、やはりキリスト教起源の安息日、Sabbatumから samedi。

 

 しかし、中学から習ってきた英語では、日曜日は太陽のsunから Sunday、月曜日は月のmoonから Monday はわかるが、その他は何であんなに無茶苦茶なのか。覚えられない、特に水曜日。

 うぇどんずでい?

 

 「宇宙観の展開」という話を High Intelligence City でしなければならなくなって、各地の宇宙創成神話を調べているうちに、答えに出会った。

 

 北欧神話だ。どんな宇宙創成神話かというと

「天地のはじめ、この世にあったのはギンヌンガガップという霧の立ち込めた空隙であった。南にはムスペルハイムという燃えさかる火で氷河を溶かす炎の国があった。解けた氷のしずくからイミール(Ymir)という最初の神が生まれた。その後、オーディン(Odin)ら三兄弟神が生まれる。三兄弟神はYmirを殺し、その身体から大地を、血から海を、骨から山を、髪から樹木を、頭蓋骨から天を創った。炎の国に飛び散る火花を集めて太陽と月を作り、細かい火花を星として天空に散りばめた。」

また、Odin達兄弟神が人間の国を造り、トネリコの木から男性を、にれの木から女性を作って、Odinが生命と魂を吹き込み、他の2兄弟が理性・感性・言葉を吹き込んだそうだ。こうして、宇宙や人間を創ったOdinという神は北欧では偉大な神として信仰されていたようだ。

 この神様 Odin の名が Woden、Weden と変化し、「オーディンの」の「の」に対応する「es」がついて、Odin に捧げる日が、「Wednesday」、水曜日になった。

 Odinは偉いので、その六人の息子の一人、雷神であり農耕神であるThor (トール)に捧げる日が Thursday、木曜日になっている。

 Odinの末息子の軍神がTyr(ティル)で、TyrがTiw、Tiuと変化し、「~の」の「の」に対応する「es」がついて Tuesday になったものが火曜日で、Tyrに捧げられた日である。ラテン世界でも北欧でも火曜日が軍神に捧げられているのはなぜだろう。

 金曜日は、愛と美と豊穣の女神Freija(フレイア)に捧げられた日で Friday。これも何故かビーナスから取られたvendredi、フランス語の金曜日と語源が似ている。異なる神様ではあるが。

 今度は別の意味で、何故か土曜日は北欧神話の神様ではなくて、ローマの農耕神Sāturnus(サトゥルヌス)からきていて、Saturdayになっている。

 

 謎が一つ解かれたら、また謎が出てきた。