97.ライプニッツの積分法

 ニュートンとは独立に、微積分法はライプニッツによっても発見されている。ニュートンによる積分法を説明したのに、ライプニッツに触れないのは片手落ちの様な気がするので、ライプニッツによる求積(積分)法を記しておこう。

 

 ライプニッツは、ある曲線の下の( x 軸と囲まれた)面積を、“等しい長さ(横幅)の縦座標の総和”とみなした。これが積分だ。逆に、“縦座標と横座標それぞれの値の差が小さくなっていくときに、それらの比によって、曲線の接線が決まる”ことに気づいた。これが微分だ。

 

 1675 年のノートによって、積分を見ておこう。

 

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 図で、曲線の下の OAB の面積は、縦座標 y の総和と見なした。“すべて”というラテン語の形容詞、omnis の属格、“すべての”に対応するomnium から、y の総和を

 

    omn. y  ( OAB の面積)   ・・・(1)

 

と書いた。

 一方、OBC は、面積 xw の長方形の総和だ。ここで、w は、横座標 x が幅 1 隣に進んだ時の y の増分だ。x+1 と x での y の差のこと。そこで、OBC の面積は、

 

    omn.xw   ( OBC の面積)   ・・・(2)

 

と書ける。また、OA の長さを、ult.x と書き、OC の長さは w の総和、omn.w なので、長方形 OABC の面積は

 

    ult.x , omn.w  (長方形OABCの面積)  ・・・(3)

 

と書く。ここで、コンマ( , )は、掛け算(×)の意味で使われている。こうして、(1)、(2)、(3)から、面積の関係として

 

    ult.x , omn. w = omn.y + omn.xw

 

が得られる。ここで、右辺の y は、w の総和なので、

 

    y = omn.w

 

と書けるので、これを代入すると

 

    ult.x , omn.w = omn.omn.w + omn.xw

 

すなわち、

 

    omn.xw = ult.x , omn.w -omn.omn.w    ・・・(4)

 

と書き直される。

 

 さて、まずは、

 

    y = x

 

の曲線(直線)を考えよう。このときには、

 

    y = omn.w = x

 

で、x が 1 単位進むと、y は 1 増えるので、w = 1 だ。したがって、(4)から、ult. x = xと書いて、

 

    omn.x = x2 -omn.x

 

が得られる。整理すると

 

    omn.x = x2 / 2

 

となる。要するに、y = x の曲線の下の面積は、x2 / 2 であるということで、y = x を x について積分したことになっている。

 

 次いで、今度は、

 

    w = x

 

としよう。(4)は

 

    omn.x2 = x × omn.x - omn.omn.x

 

となるが、omn.x = x2 / 2 を先ほど求めたのでこれを代入すると

 

    omn. x2 = x3 / 2 - omn.x2 / 2

 

となり、整理して、

 

    omn.x2 = x3 / 3

 

が得られる。y = x2 の曲線の下の面積が x3 / 3 というわけで、y= x2 を x について積分したことになっている。

 次は w = x2 といった具合にこの操作を繰り返していくことで、結局

 

    omn.x n = xn+1 / (n+1)

 

が得られる。y= x n を x について積分したものは、 xn+1 / (n+1) となるということ。

 

 ライプニッツによる積分法の発見だ。

 

 ライプニッツが最初に使った記号、omn.は、ラテン語で総和を意味する summa omnium から来ている。omnium は先ほど記した、「すべての」の意味であり、summa は「和」のことだ。英語に入って、sum になる。ライプニッツは、最初用いていたomn. の代わりに、summa の頭文字の s を引き延ばして長くしたものを、新たに積分の記号にした。∫ だ。曲線 y ( = y(x) )の下の面積を、∫ y と書き、さらに後になって ∫ y dx と書くようになった。現在の記法だ。

 微分は、“逆求積”であり、

 

    ∫ ℓ = ya としたときに ℓ を求める

 

演算とした。右辺は“面積”ということで、2つの変数の積でわざわざ書いている。ライプニッツは、積分微分も“演算”としてとらえていて記法を生み出した。一方ニュートンは、積分は、x' = f (t) を x について解く“問題”と捉えていたようだ。

 

 ちなみに、ライプニッツが最初に使ったラテン語の omnis であるが、「すべての」という属格が omnium であり、「すべてのために」という与格が、omnibus (オムニバス)だ。そこで、「すべての人のため」にあった乗合馬車のことが omnibus と呼ばれ、その後、馬車から自動車になり、やがて、omnibus が略されて bus になった。

 

 通りを走っているバスって、ラテン語の変化する語尾じゃないか。

 

 さらに、複数の独立した作品を一つに纏めた映画なんかを、オムニバス作品と呼ぶようになり、現在、大学で一つの講義を複数教員が行う授業形態を、オムニバスと呼んでいる。

 

 オムニバス授業の準備をそろそろせねば・・・。