124.確率は難しい?

 高校生の時、数学はまぁまぁ出来た方だと思うが、確率だけは苦労した。条件付確率辺りが特に厄介だった覚えがある。

 

 確率は難しいらしく、有名なところでは「モンティ・ホール問題」というのが知られている。アメリカのモンティ・ホールという人が司会をする「Let’s make a deal」 という番組でゲームが行われていたそうだ。どんなものかというと、ゲームの挑戦者の前に3 つのドアがあり、そのうちの一つのドアの向こうには車が、あと 2 つのドアの向こうにはヤギがいる。車のドアを当てれば、その新車がもらえるというゲーム。ドアが 3 つあり、そのうちの一つに車があるのだから、車をもらえる確率は 1/3 (3分の1)だ。挑戦者がドアを選ぶと、司会者のモンティ・ホールが、選んでいない 2 つのドアのうち、ヤギのいるドアを開ける。そこで、挑戦者はドアを変えることが許される。ドアを変えても変えなくても、正解する確率は 1/3 のままのような気がするが、最初に選んだドアを変えた方が、正解する確率が 2 倍になるそうだ。ある雑誌の読者質問欄に、モンティ・ホールがヤギのドアを開けた後、ドアを変えた方が良いのか変えない方が良いのかをある読者が質問したところ、マリリン・ボス・サヴァントという名の回答者が、ドアを変えた方が良いと回答し、数学者を巻き込んだ議論になったそうだ。しかし、マリリンが正しかった。

 

 どういうことか。

 

 まず、最初にドアを選んだ時、3 つのドアから一つ選ぶのだから、車を選ぶ確率は 1/3だ。司会者が、選ばれなかった 2 つのドアのうちから、ヤギのいるドアを開けてみせる。ここで、初志貫徹することに決めていたら、車が当たっている確率は 1/3 のままだ。

 ところが、必ずドアを変更することにする。

 図で見たら早い。最初に車を選んでいても、必ずドアを変更したらハズレだ。ハズレの確率は、最初に正解のドアを選んだ 1/3 だ。一方、最初にヤギのドアを選んでいて必ずドアを変更すると、確実に車にあたるので、最初にハズレを選んだ 2/3 の確率で車が当たることになる。

 

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 では、ドアを変更しなかったら? 最初に 1/3 の確率で車を選んでいたので、ドアを変更しなければ確率 1/3 のまま、車がもらえる。最初、2/3 の確率でヤギを引いていたので、ドアを変更しなかったら 2/3 の確率のまま、ヤギだ。こうして、最初に車を選んでいた 1/3 の確率で車に行きつくことになる。

 ドアを変更したら 2/3 の確率で車、変更しなければ 1/3 の確率で車。車をもらえる確率が、確かに倍になっている。

 

 今度は、確実にドアを変更するのではなく、半々の確率で、ドアを変更したりしなかったりしたらどうなるだろうか。最初に車を選んでいる確率が 1/3、次に 1/2 の確率でドアを変更したらヤギで、1/2 の確率でドアを変更しなかったら車だ。だから、1/3×1/2=1/6 の確率で車に行きつく。一方、最初、2/3 の確率でヤギの時、1/2 の確率でドアを変更したら車なので、車に行きつく確率は 2/3×1/2=1/3 だ。こうして、車に行きつく確率は、先ほどの 1/6 と今回の 1/3 を足して、1/6+1/3 = 1/2 となる。下図が分かりやすいかな。

 

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 これは、司会者がヤギのドアを開けた後、2 つのドアを新たに選びなおしたので、正解する確率が、2 つに一つ、すなわち 1/2 の確率に変わったということだ。

 

 うーむ、難しい。

 

 ドアの数を 1000 個にして、そのうちの一つだけ車で、残りの 999は ヤギがいるとしよう。最初、一つドアを選ぶ。1/1000 の確率でしか車に当たっていないだろう。司会者が、残り 999 のドアのうち、ヤギのいるドアを 998 まで開けたとしよう。残るドアは、最初に選んだドアと、司会者が残したドアの 2 つだ。最初に選んだドアは 999/1000 の確率でハズレだったのだろうから、司会者が一つ残したドアに変更した方が当たるだろうというわけだ。

 

 次に、別の問題を考えてみよう。今度はコインだ。コインの表が出たら月曜日に質問され、裏が出たら月曜日と火曜日に質問される。しかし、被験者は日曜日に睡眠薬を飲まされており、飲まされた後の記憶はない。だから、裏が出たときに月曜日に質問されても、質問されたことは忘れてしまって、また火曜日に質問されるということになる。

 質問内容は、「コインが表だった確率はいくらと思いますか?」

コインの表が出る確率も裏が出る確率も、ともに 1/2 だ。だから、起こされて質問されたら 1/2 と答える。

 いや、結論するのは早い。場合の数としては、コインが表で月曜に質問された場合、コインが裏で月曜に質問された場合、コインが裏で火曜に質問された場合、の 3 通りあるが、コインが表だったのはそのうちの一つ、コインが表で月曜に質問された場合だけだ。3 通りのうち、一つなので、質問されたときにコインが表だった確率は 1/3 のはずだ。コイン投げでは表裏出る確率は同じなのに。

 さて、どちらが正しいのだろうか?

 「眠り姫問題」と呼ばれる難題だ。

 

 今度はサイコロ。あなたは大勢の人の中にいて、ランダムに選ばれるとしよう。呼ばれたときにサイコロが振られ、6 の目が出たら 1 万円没収されるが、それ以外の目が出たら 1 万円もらえる。お金の得られる期待値は、

 

   1万円×(5/6:もらえる確率)-1万円×(1/6:没収される確率)= 6666円

 

なので、ラッキーだ。期待値として 6666 円貰えるのだから、参加しない手はない。ただし、6 が出たら、ゲームはそこですべて終了。そのときまでにあなたがランダムに選ばれていなかったなら、まぁ、ゲームに参加できず、諦めよう。

 まず最初、一人呼ばれた。サイコロは 6 以外の目が出て、その人は 1 万円貰って帰った。うらやましい。

 次に 9 人呼ばれた。サイコロは、やっぱり 6 以外。この 9 人も同時に 1 万円ずつ貰って帰った。

 次いで、90 人呼ばれ、サイコロが 6 以外で、いいなぁ。

 次は 900 人だ。その次は 9000 人呼ばれる。最初の一人以外、9人、90人、900人と10倍ずつ呼ばれる。

 いずれ、6 の目が出て、そこに参加していた人は 1 万円ずつ没収される。そうすると、今まで参加していた人の 90 % の人が 1 万円ずつ没収されることになる。たとえば、9000人の時に 6 の目が出たら、それまでの 1+9+90+900=1000人は 1 万円ずつ得したが、最後の 9000人は 1 万円ずつ損し、ゲームの胴元は、9000万円―1000万円= 8000万円儲かる。言い方を変えたら、サイコロの目の出る確率として 5/6 の高確率で 1 万円得られるが、全体の 90 %が 1 万円損するということは、9/10 の確率で損をする。1 万円得られた人の集団に入る確率は、たった 1/10 の確率だということになる。

 あれ、さっき、1 万円貰える 5/6 の高確率はどうした?

 

 誰か、マリリンに聞いてくれないかなぁ